‐‐‐‐‐‐‐帰る?‐‐‐‐‐‐‐
3Sが終わった途端、前列に陣取っていた女子の一団がまとめて引き揚げ始めた。
わっかりやすっ、てか、あと1バンドなのに、観てけよ。
去っていく女子の集団の中に、青木のポニーテールを見つけた。
えっ?もう帰る?
振り向いて、手を振る笑顔の後を追った。
「青木」
「ショー、ごめん。おかーさんから電話が来て」
今朝、心配をかけたから直ぐに帰ると答えたと言う。
「送ってくよ」
「いいよ。まだ終わってないし、ライブ」
「ちょっと待ってて」
ヒデとカッキーの所に戻り、
「青木のこと、送ってくる」
「もうSASAMI、始まるぞ」と、ヒデ。
観たいけど、青木を一人で帰らせたくない。
「わるい。片付け終わるまでに戻るよ」
ピックを貸してくれたカオリン。あのタイミングで助けてくれなかったらライブ、ヤバかった。
俺も、見届けたい。後髪引かれるってこういうことか。でも迷っている時間はない。
「じゃあ、頼む」
カッキーに、声をかけた。
「わかった。頑張れよ」
頷いて、青木のもとに急いだ。