‐‐‐‐‐‐‐休憩‐‐‐‐‐‐‐

 

「エー、床が濡れたので、10分休憩しまーす」

 

吉田部長がゲストに声がけしてくれてる間に、きみしろ四人でモップ掛けと前進したバスドラの位置直し、倒れたマイクスタンド類の整え等の作業を、いつものF1ピット並の早さで次の「委細面談」のためにやった。

 

バンド入れ替りフェスってこういうのが地味に大変。とくに俺らみたいに騒がしいバンドの後は。

 

「ショー、ギター最高!すげー良かった」

 

椎名~。「サンキュ」

 

「ちょっとー、耳おかしいんだけど。どうしてくれんの」

 

山口が笑いながら肩を叩いてきた。

 

「避難しろって言ったろーが」

 

「きみしろ、爪痕残したじゃん、爪だけに」

佐久間が笑いかけてきた。

 

アニキー。佐久間に誉められると嬉しい。グータッチした。

 

あっ、カオリン。

 

「きみしろ、上手いね。ビックリした」

 

「ありがとう」

照れる。

 

そうだ、ピックの御礼を…

 

「ショー、タオルあるよ」

 

カオリンの後ろから、青木が声を掛けてきた。

 

「あっ、ゴメンね」

 

気付いたカオリンが笑顔で青木に立ち位置を譲り、あっという間に去って行った。しまった、礼を言いそびれた。

 

「汗、すごいよ」

クスクス笑いながら、パステルブルーのバスタオルを渡してくれた。

 

「助かる、けどビショビショになるぞ」

 

「いいよ」

 

まるでシャワーを浴びたかのように濡れそぼっている。

 

「俺らのは、ねーの?」

ヒデがからかうと、

 

「ないよー、ゴメン」

動揺したのか、直ぐに仲間のところに戻って行った。

 

青木のタオル。柔軟剤?清涼感のある花の香りに顔を埋めて、しばし陶酔。

 

「浸るなコラ!」

丸めたバンド譜でヒデにアタマを叩かれた。

 

「イッテ―」

 

「きみしろー、早くハケて」

部長の催促。

 

「「「「御意!」」」」

 

おっ、揃った。

休憩、終了。