‐‐‐‐‐‐‐円陣‐‐‐‐‐‐‐

「さくまー」

「何?」

引き揚げようとする背中に思わず声をかけてしまった。何なん、俺。

「なんでもない」

フェロモン分けろってか、バカ。

「なんだ?赤くなって。可愛いなーお前」

髪をクシャクシャと撫でられ、ちょっとムッとした俺は、

「負けねーぞ」
と、呟いた。

「おぅ、望むところだ」

「ショー、早く!」

笑顔で去っていった奴の後姿を見ながら、ヒデに引っ張られ練習室に入った。


F1のピット並みに素早くセッティング、ハマーのカウントで早速始める。

あぁ、満たされる。
音楽の中に入っていくとき、狭い空間から水に放たれた、魚の気分。ジャンルはなんでも、ここが俺の居場所って気がする。

歌いながらチラッとヒデと目線を合わせる。大丈夫だ。お前、センスあるから楽勝だよ。テレパシーを送ってみると、そうかもな、と返ってきた。目の輝きが戻ってきた。
騒がしいからウケは悪いだろうけど、リズム隊と相談してちょっとダンサブルにアレンジした一曲目。二曲目は、浮くのを覚悟で、ハードコア・パンク。喉をヤられちまうから、歌は本番まで温存。青木もドン引きするかなぁ。

「クラスの仲間に、きみしろ、出てくれて感謝って言われた」と、カッキー。

「なんで?」

「見たくても、女子バンドばっかだと入りにくいってさ」と、ハマーが笑う。

「アー、それはあるかもな」

男子ばっかのバンドは俺らだけ。

「カマシていこう」

「おぅ、やるぞ!」

「オー‼」

何、円陣組んでんの俺ら(笑)。楽しみだな、早くライブやりたい。





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