‐‐‐‐‐‐‐街角ピアノ④‐‐‐‐‐‐‐

目線で確認しつつ、エンディングへ。

サックスに合わせて俺もテンポを落とし、シンプルに、響き明るめのカデンツァでまとめる。

独りだったら多分辿り着けなかった、カッコいい終わりかた。



一瞬の静寂が有って、ワァーという歓声と拍手に包まれた。いつの間にか増えたオーディエンスに驚愕!

唖然とする俺に、サックスの兄さんが握手を求めてきた。気づくと汗ばんでる俺に比べて、兄さんは涼しい顔。

「てか、誰ですか?」

俺の問い掛けに、また周囲からドッと笑いが起こる。

「池田といいます。昭和音大のジャズ科でサックス吹いてる。君は、何者?」

「昭和音大って新百合ヶ丘の?俺、麻生高校の軽音部、槙田です」

「おー、近いじゃん。何?バンドやってるの?」

「ハイ、パンクバンドのコピーとか…、今日はちょっと連れがいて」

青木の方をチラッと見ると、池田さんも青木に会釈してくれた。

「ゴメン、デート中邪魔したね。ピアノがあんまりイカしてたから、思わず入ってしまって。ジャズは、習ってるの?」

「いや、池田さんのソロがカッコ良かったから、それっぽく合わせただけで、アドリブです」

「えっ、ホントに?」

「ハイ、ありがとうございました」

席を立って、青木の方に戻ろうとした瞬間、シャン、シャン、シャン、シャン、観ている人達から手拍子が。

「?」

「アンコール来たね」
微笑む池田さん。