‐‐‐‐‐‐‐山下公園①‐‐‐‐‐‐‐

「ヤバい。食い過ぎた」

普段なら全然イケる量なのに、今日の俺、色んな意味でいっぱいいっぱい。

「ごめんね、結局半分食べてもらっちゃった。残すの悲しいから、助かった」

自分で頼んだものを残す申し訳なさ、そういう小さいところも、なんか価値観が合う、この子とは。

ダイエットのためサンドイッチを具だけ食べたり、食べられない量をあれこれ頼んで堂々と残す、そういう女子を見かけて何かイヤだと思ったのを思い出した。

「なんか、話が飛び飛びで申し訳ないんだけど」

「続き?話して。聞くよ」

腹ごなしに外に出て、山下公園までの街道をゆっくり歩く。

なぜか、当然のように手を繋いでしまっている。混雑した中華街を抜けて、見通しのいい道路に出ても、ずっと。

離したくない。
このまま一緒にどこまでも歩きたい。

「さっきのみたいなヤバいエピソードがいっぱいあって、きっとそれは俺が俺である限り、直らないし、変わらない。一緒にいると、迷惑かけるかもしれない」

「うん。わかった」

思わず隣を歩く横顔を、見た。

「ん?」とこちらを向いて、微笑んだ。

慈愛?憐れみ?呆れ?
表情から読み取ろうとしたが、わからなかった。

「引いた?」

「ううん」

立ち止まって、俺の親指をきゅっと握った。
同時に、俺の中の、脆いところも、キュッとなった。

「ショーって…」

最後通牒キター。

「ちっちゃい頃から、一生懸命、周りのことを考えてきたんだね」

「それは…」

「迷惑をかけないように、周りの人が居心地よく過ごせるように」

何も言えない。
自分だけ異物のような、ある種の疎外感を持って生きてきたのは、確か。

「みんなをまとめるのが上手いから、クラス委員に推されたときも、頑なに断って」

「大事なときに何かやらかすかもしれないから」

「リーダーはやりたがらないのに、みんなのことは凄くよく見てる。面倒見がいいよね」

「気になるから。単なるお節介」

「ピアノ、あんなに上手いのに、弾けるって言わないし」

「俺のはテキトーだから」

「もう、どんなに自分を悪く言っても、『カッコイイ』が、漏れてるよ」