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「ミワちゃーん!」
ジムのところで、マメを抱っこしたしゅうくんが手を振っている。
「よし、そろそろ行こっか」
「うん!」
来たときと同じフォーメーションで、中野島駅まで戻る。
「脚、めっちゃ速いじゃん」
「ショーだって。本多を振り切ったとこ、見たよ」
「あれは…(笑)。しつっこかったから必死で」
「陸上部から誘われなかった?」
「来たけど、軽音しか考えてなかった。運動部入ったことないし」
「ふぅん。軽音、楽しい?」
「ん。いい感じにユルくて、でもみんな練習は真面目で、仲間もいるし、俺に合ってると思う」
「仲間…、真島?」
「そう、ヒデ」
「一緒のバンドなんだ。いいなぁ、ライブとかやる?」
「近じか。決まったら知らせるよ。観に来て」
「いいの?行きたい」
「ただし、パンクバンドだから、かなり騒がしいけど」
「いいよ。ショーが出るなら」
思わず、顔を見た。
「ん?」と微笑む。
いつもながらストレートな好意の表現。素直で、思ったことがそのまま口をついて出る。表情が豊かで、わかり易くて、あれこれぐるぐる考えてハマる俺にはない部分。そういえばコクってくれた時も、すごくカジュアルだった。
「マジで耳栓いるかも」
「用意しとくね」
フフフフ、と嬉しそうだ。
うちのクラスはどーせ男子しか観に来ないと思っていたけど、気合いが入る。