‐‐‐‐‐‐‐山口綾‐‐‐‐‐‐‐

廊下できみしろの皆とたむろってたら、空き教室から椎名と山口が出てきて、椎名は医務室の方向に歩いていき、山口は平野がなんだか慰めてる感。

「ええ?」

「ウソー!」

「いいよいいよ」

話はよく聞こえないけど、なんか山口がやらかした?

独りになったところを見計らって聞いてみた。

「よう」

「何よ」

顔を上げない。

「椎名に怒られた?」

「ハァ?」

顔を上げて、いつもの強気な目力で睨んできたが、目の縁が赤く、明らかに泣いたあとだった。こういうの何て言うんだっけ。

「鬼の目にも涙」

言った瞬間、脚を蹴られた。せっかく治ってきた方の脚!

「イッテェ…」

腿の方まで電流が走って、その場にしゃがみこんだ。

「ちょっと、大丈夫?大げさ!」

「ちげーよ、こっちの脚は今ヤバイんだ」

捲って見せた包帯を見て驚いた山口に、コーラを奢ってもらうことになった。

「ごめんごめん、座って話そ?きみしろの真島にもいいニュースあるから」

「ヒデに?」

「臼井サワちゃん推しだよね」

「そうだけど」

「椎名とまだ付き合ってないって」

「マジで?」
ヒデ、やった。

「でも、デートしてたんだろ?」

「あの二人、好みがすごく似てて、服も被ったらしい」

「なん…」

そっか。ヒデには朗報だけど、実際のところ「まだ」ってだけで、もう時間の問題な気がする。