拓斗だ。
あの怖い夢の時と同じ、仲間も二人いる。
恐怖ですくんだウチに、サイトーが、耳打ちしてきた。
「そのまま、真っ直ぐ駅まで行って、交番のお巡りさん呼んできて」
「わかった」
言われた通り、拓斗たちの方を見ないで、駅の方向に走った。履き慣れない草履が途中で脱げそうになったけど、早く、早く誰か頼れる大人を見つけて戻らないと、ウチのせいでサイトーが!
「後悔するぞ!」
最後に会ったときの、拓斗の言葉が蘇る。
やだやだ、サイトー!
ちょっと待って、駅前に交番ってあったっけ?
新百合ヶ丘まで行かないと、ないよ!どうしよ!
よそ見して走っていたら、リーマン風の体格のいいオジサンにぶつかり、転んでしまった。
「おっ、大丈夫?ゴメンゴメン」
腕を取って起こしてくれた手をそのまま掴み、
「ともだちが、変なやつに絡まれてて、助けてもらえませんか?」
「えっ?どこ?」
「110番じゃ間に合わないの、とにかく一緒にきて下さい」
サイトー、待ってて!
今助けに行くからね!
息を切らして公園に駆け込んだ。
「サイトー、ごめん!駅前に交番なぁい!」
あれ?いない。
見ると、サイトーが水呑場で手を洗っていた。
パッと見、無傷??