拓斗は、地面に膝をついたままウチを睨み付け、

 

「ゴチャゴチャうるせー女だな!」
 

と叫び、土埃を払って立ち上がると、何か小さな包みを地面に叩きつけて、後ろも見ずに立ち去ろうとした。
ふと立ち止まり、振り返って、

「真侑、後悔するぞ!」

捨て台詞を残して、駅の方向へ走っていった。

後悔って…。つきあったこと後悔してるよ、もう。

拓斗が置いていった包みを、サイトーが拾ってくれた。

ラッピングに見覚えがある。ウチの好きな、町田の洋菓子店のマシュマロだった。覚えててくれたんだ。ちょっとだけココロが痛んだ。

でも、ダメダメ、きっとおんなじことの繰返し。元サヤに戻ったら、拓斗はきっとまたウチを傷つけ、踏みつけてくる。

「サイトー、ありがと。拓斗、ビビリだから、多分もうこないよ」

「よかった、怪我させなくて。オレも怪我したくねーし」

「なんか、サイトー、喧嘩慣れしてるね、意外」

「うち、男ばっかだから。上の兄貴は東海大ボクシング部」

「ひぇー」

その瞬間は見てなかったけど、大きな怪我もさせずに、あのカッコつけ野郎を軽くスッ転ばせたの、凄い。拓斗も、ビックリしてたなぁ。ちょっとウケる。

「マシュマロ」

「え?」

「いらねーの?拓斗とやらがせっかく…中身は無事だぞ」

「いらなぁい。サイトーにあげる。あっ、ちゃんと別でお礼はするからね」

貰ってくれて、よかった。かわいいラッピングのお菓子を、公園のゴミ箱に捨てるのは、なんか悲しい。

 

サヨナラ、拓斗。