「シーナくーん!」

誰かの声で顔を上げると、丁度三人がステージ袖から入ってきたところだった。

「ウチらも負けずにいこ?」

親衛隊三人と、声を合わせて呼び掛けた。
せぇのぉ、

「シーナくーん!」

あっ、笑ってくれた。

「先輩、ちょっとこれ以上人入れるの危険」

冷静に扉の締切を頼む佐久間。たしかに、後ろからぐいぐい押されてもう限界。

「あっ、そこ危ねぇ!あんまり押さないで。大丈夫?」

押されて苦悶の表情のウチらに、シーナくんが気づいてくれた。

「全体的にちょっとだけ下がってー」

サウンド・チェックをしながら佐久間が声掛けしてくれて、潰されそうなウチらもやっと人心地ついた。

空間を切り裂く、サワちんのドラムのチェック音。ウォー、キャーと歓声が上がり、一瞬ここが学校の視聴覚室というのを忘れそうになった。なんなら、ライブハウスでしょ、ここ。軽音の仲間だけでほのぼのとスピッツを聴いていたのが、たった数十分前なのに。

ギター佐久間とベースのシーナくんもそれぞれ自由に掻き鳴らして、チェック完了、三人で目線を合わせる。うわーん、カッコいい。

一歩前に出て、シーナくんのMC。外野がキャーと叫んで、苦笑。笑顔がかわいい。スマホ持ってくればよかった、ウチのバカ。こんなに堂々と写真撮れる機会なんて、滅多にないのに。

映える。
メチャメチャ映える。
佐久間もカッコいいけど、ライトの逆光に浮かび上がるウチの好きな人は、普段よりもっと眩しい輝きを放って、うまく言えないけどやっぱり人前に立つ人なんだ、ステージの側の人だ、ていう気がした。