右手でハイハットという小さいシンバルが鍋みたく合わさったやつを、一定のリズムで叩くだけ。これなら出来るー!
「そうそう、いいよ。次は左手入れてみようか」
4個叩くうちの3個めに左手でスネアドラムを。
「ちょっとゴメンね」
後ろに回って、左のスティックの根元のところを一緒に支えてくれた。手、重ねちゃっていいのに。
出来た!
「出来てるじゃん。筋がいいよ」
ニッコリ笑う。あっ、歯がきれい。
リズムふらふらだけど、なんとか8小節くらい続けて出来た。
「次、足入れてみよっか」
どったん、ドヒッ!
ダメだ、右足踏むと、左手のタイコが釣られて引っ張られるゥ…
ハァハァ、
「ダメっす、才能ないわ、私」
いっつもはウチ、なのに、なんかよそゆきになってる自分に気づく。
「今日初めてだろ?最初はそんなもんだって」
ニコニコして、
「じゃあバスドラとスネアだけやってみようか」
諦めて返そうとしたスティックをまた渡される。
ドッタン、ドドタン
ドッタン、ドドタン
「おっ、スゲー!出来たじゃん」
もう、この、誉め上手!
でもすっごい嬉しくって、ドキドキした。
調子に乗って、右手のハイハットを入れたらまたバッヒバヒに。
「駄目だぁ、私、二つまでが限界!」
「大丈夫だって。手足バラバラじゃなくって、それぞれ一緒に叩く拍があるから、全部入れてゆーーっくりやってみ?」
ばちっと目が合った。薄茶の大きな瞳。
この目に弱いんだな…
ずぅったん、ずぅずぅたぁん
ずぅったん、ずぅずぅたぁん
「☆ゆーーっくりだけど、出来たぁ!」
「その調子!んじゃ、明日また続きね」
えっ、もう終わり?
振り返ったら、おんなじようにレクチャー待ち女子がいっぱい!げっ、みんなこのふわふわ男子待ち?