ん?ヤバイ、オレ、完全に「反応」してる。
くったりと体を預けてきたヤツは、既にちょっと眠そう。

このまま押し倒したい衝動をどうにか捩じ伏せて、静かに唇を、離した。

「ごめん、オレ、ちょっとトイレ」

「ああ」

「疲れたろ。ベッド入ってていいぞ」

「サンキュ。ごめん、寝ちまうかも」

「いいよ」


恐ろし。
人たらし、恐ろし。

人たらしどころじゃねぇ、女殺しだ。
男も殺せる、キスだけで。


どうにか熱を冷まして、宥めすかし、気を取り直して部屋に戻ると、女殺しは、もう寝ていた。

残念だけど、ホッとしている自分もいた。


オレの好きな、天使の寝顔。
こんな顔して…、エロいよ、お前。


薄暗がりで愛しい人の寝顔を眺めつつ、オレも直ぐに、眠りに落ちた。



----------------Happy Birthday----------------

朝。
手を伸ばして、隣をまさぐると、いない。

「!」

普段では考えられない速さで飛び起き、部屋の中を見回すが、アイツはもういなかった。

全部夢だった?オレの妄想?

階下に降りると、母が上機嫌で洗い物をやっていた。

「起きたね」

「今、何時?」

「もうすぐ10時」

あぁ、アイツが家に戻ると言ってた時間。もう少し早く起きたら、会えたのに。

「なんで起こしてくれんかった」

「ユウキくんが、佑、疲れてるから寝かせてあげて、夕べ俺がなかなか寝かさなかったから、って!ウフフ」

ウフフじゃねーよ、そのまんまだよ!ああ~、一緒に朝メシ食って、夕べの余韻を楽しみたかったのに…