聞けば、町田の方の高校のヤツで、中学の頃クラスの仲間と町田に遊びに行った際に知り合ったらしい。

「昨日も、明日も来るからな!言われて…怖い」

町田からわざわざ平野の百合が丘まで出てきて追っかけ回すなんて、執念深いな。

「わかった。とりあえず家まで送るよ」

「ありがとう」

ホッとした表情の平野。会ってみないとわからんけど、ホントにヤバい奴だったら警察に行かないとな。

「そいつとまだ連絡とってる?」

「ブロックしたから…どこで待ってるかわかんない」

改札を出て道路を渡り、暫く歩いて高石寺前公園前を通りかかったところ、スマホから顔を上げた男が、近づいてきた。この辺りでは見かけない制服、涼しげな目元に細身の、なかなかのイケメンだった。

テンションMaxで怒り狂って来るかと思いきや、沈んだ雰囲気で拍子抜け。気持ちが離れてしまった相手を待つのは、つらいよな。

「こっちに気持ちが残っていても、迷惑だから」
シナユーの言葉が甦る。

「そいつが、言ってた奴?」

「そう」
オレの陰に半分隠れながら、平野が言った。

 

イケメンは、目線を一瞬オレに合わせると、真っ直ぐ近づいてきて、平野に話しかけた。

「バッグ、悪かった。ついカッとなって…、全然喋ってくれねぇから」

「…」

「同じようなの、探したけど、見つからなくて」

「…」
言葉を発しない、平野。

オレの、出番か。

「バッグ、手作りですごく大事にしてたやつなんだ」

「…すまん」

「それと、こいつすごく怖がってるから、いつまでもつきまとうの、やめてくれよ」

「お前に言われたかねーんだよ」

ん、不穏な空気が漂い始めたと思ったら…

「なんでおれじゃダメだったのか、言えよ!」

急に血相変えて、キレた!