オレの後ろに回って、長い腕で、抱き締めてくれた。 無様な顔を見ないでいてくれるのが、コイツの優しさ。

シナユーのいい香りがオレをふわっと包んで…。
このまま消えてしまいたい気持ちになった。

「佑、辛いのか?」

「…つらい」

鼻水が流れる。

こういう時、映画やドラマじゃ綺麗に涙だけだよな?なのに、現実は厳しくて、目から鼻から、華厳の滝。

覗きこんできたシナユーと目が合って、オレの膨大な鼻水をみて驚き、ちょっと笑った。つられてオレも、吹き出し、二人で笑った。笑った拍子に、鼻水半端なく飛び散った。

けれどもヤツは、嫌がるでもなく、ティッシュを手渡しながら、

「ごめん、俺。自分の話ばっかで。佑も話せよ」

言えるか、バーカ。

「いいんだ。シナユーがいてくれるだけでいい」

いてくれるだけで、いいんだ。




人前で泣いたのなんて、何年ぶりだろう。卒業式の類いでも、絶対に泣かなかったのに。



シナユーは、オレの心を、根底から揺り動かした。

そう、ヤツ風に言うと、Rockしたんだ。