オレのこと、信頼して来てくれるんだ。変なことして絶対ガッカリさせないようにしよう。しっかり数学、教えてやろう。聞いたときはテンパったけど、段々落ち着いて、快く迎える気持ちの準備が出来た。


一旦家に帰ったシナユーは、宣言通り寝袋と歯ブラシと勉強道具を携えてやってきた。

普段着のセンス!
格好いいヤツが着ると、なんでもないTシャツでも洒落て見える。得やな。

「わるい、佑。でも、ホントに助かる。最近、寝不足で、授業が全然頭に入ってこなくて…」

「ちゃんと寝てんのかよ」

「あんまし、寝てない。やりたいことが多すぎて」

こないだも、白目むいてたっけな。眠いのに、一生懸命目を開けてた様子を思い出して、思わず吹いた。

「何だよ」

小刻みに肩を震わせて笑いをこらえるオレを、不思議そうに見てる。

「何でもない。夜、ちゃんと寝ろよ」


ヤツがひっかかった疑問点を、一つひとつ解明していった。文章題が苦手なシナユーは、これってどの公式が当てはまる?ここでいうXってコレ?など、色々質問をしてきたが、元々地頭は悪くない、簡単な説明で、すぐにコツを掴んだようだった。

「あー、段々わかってきた。何とかイケそう」

安堵したのか、猫みたいに大きく伸びをして、オレのベッドに倒れこんだ。何やってんだ、バカ。襲うぞ。

「シナユー、風呂は?寝袋持って来てんだろ、そこで寝んなよ!」

「大丈夫、だいじょうぶ」

既に眠そうだ。ヤバい、これ、寝落ちするパターン?

そわそわと落ち着かず、喉が渇いて、母が持ってきてくれたサイダーを口に含んだタイミングでシナユーが、

「佑、キスしたことあるか?」なんて訊くもんだから、ブー!盛大に吹いた。