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目覚める直前、夢を見た。
10秒も無い程短い夢。
昨日読んだ漫画のせいだろう。
1コマだけの漫画、中心で赤ちゃんが涙をポロポロと零し宙に手を伸ばしている。
その上から赤ちゃんを抱きあげようとする小さな手が伸びていた。
白い光の中、数人の子供が赤ちゃんを迎え入れるようなイメージが膨らんだ。
顔はふっくらとして似ていないけど、赤ちゃんはよしきだと思った。
よしきをお迎えに来てくれた子たち。
とても温かい気持ちになった。
私「フフ…。」
自分の笑う声で目が覚めた。
お腹を触り、よしきがいないことを確かめた。
本当に失ったんだ。
辛すぎる現実に涙が溢れた。
絵に描いたような夢、こんなに都合の良いものを見てしまった自分を激しく嫌悪した。
自分で殺したんじゃないか…。
罪悪感の声がして、胸が抉れたように痛んだ。
そういえば体中が痛い。
筋肉痛のような痛みを全身に感じた。
よしきを握りしめた左手、点滴が刺さっていたせいもあってか、簡単に持ち上がらなくなっていた。
入院着から私服に着替え、荷物の整理をした。
昨日手続きで見せられた死産証明。
何も残っていないことを思い出し、事務の方にお願いしてコピーを貰った。
「経済的理由」と記載が無いことに、妙に安心した。
母子手帳の記入欄をお願いすると、また次の診察で頼むように言われた。
診察があるのかと思っていたけど、昨日もう1度見られたナプキンの出血量で大丈夫だと判断された。
朝食後、そのまま退院となった。
夫は近くのホテルに泊まっていたため、お迎えに来てもらった。
4日ぶりとは思えない程久しぶりに感じた夫。
夫「お疲れ。」
荷物を持ってくれる目の前にいる夫に安心し、街中にも関わらず泣きながら歩いた。
帰り道、コンビニに寄ってエクレアを食べた。
妊娠中食べられなかったものを、これから沢山食べよう。
車内では入院中のことや、夫が自分でも驚く程ショックを受けたこと、よしきの体重がサヨナラ(347)gだったこと、NIPTの結果でよしきが男の子だと知った時、長男よりも運動神経が良いかもしれないと思ったこと、よしきの話題で持ちきりだった。
私にとって、とても癒される時間だった。
自宅に着いて、また悲しみが蘇った。
このソファに座る時、よしきが無事に産まれてくることを信じていた。
このテーブルで食事する時、よしきに少しでも良い栄養を取りたいと思っていた。
このベッドで眠る時、よしきが明日も生きているように願っていた。
よしきと生きていた時間が遠くて夢のようで、もう届かなくなってしまったことを実感し、家中で号泣した。
夜、義実家から夫が長男を連れ帰ってきた。
長男は嬉しそうに、はにかんでいた。
長男「ママ、大丈夫?」
心配そうに抱き着いてきた。
私「大丈夫だよ。ママがいない間よく頑張ったね。」
ダメだ。泣けてくる。
涙ぐみながら長男の頬を撫でた。
温かい。柔らかい。
長「泣いてるの?」
私の顔をじっとのぞき込む。
私「泣いちゃった。会えて嬉しい。病院で寂しかったんだもん。長男君も寂しかった?」
少し茶化した。
長「すこーしだけね。」
いつもお腹を撫でて「おやすみ」を言っていた長男。
ついお腹を触ろうとして、手を引っ込めた。
もう、いないんだ。
胸が痛くて、喪失感で壊れそうだった。