魔界の牧場(後篇)
<前回までのあらすじ>
地球の平和を守るため日夜身を粉にして悪と戦うJ9。今回、指令を受け向かった先は「魔界の牧場」という地球征服を目論む魔法使いの巣窟であった。ここでは捕えた人間を皆動物に変え大切に育てるという暴挙が行われている。
このままでは人類が危ない。
戦え、J9!地球は君の帰りを待っている。
人類滅亡まであと275日!
とりあえずの避難場所を探すために園内マップを見ていた私はあるエリアに注目した。
ハンモックの森
直感的に何かを感じた私はこのエリアを目指した。
(決して足が疲れたとか持病の腰痛の症状が出たとかいう理由では57%ない!)
果たしてここは魔法使いの手を逃れた人間達の避難場所であった。
聞くと、夜間に姿を変えられた動物が新しい仲間を求めて襲いにくるらしいのだが、このハンモックの上に寝ていると動物達は手が出せないという。
私も試しに寝てみたが、なるほど木立の中で太陽の光が見え隠れして何とも言えず心地よい。
これは快適
とのんびり寛いでいたのもつかの間、
動物達の大群が押し寄せて来るのが遥か彼方に見えるではないか!
「あわわわわ…
」
動物達の急襲にすっかり狼狽した私は誤ってハンモックから落ちてしまった。
そこへ動物達が押し寄せる!
「ウギャァアアア
」
家族に対する父親の尊厳など一瞬で吹き飛ぶような情けない悲鳴をあげるのと、トリックの上田次郎並みのスピードで恐怖に失神するのとをほぼ同時にやり遂げた私が目を覚ましたのは見慣れぬ住居のベッドの上だった。
「ここは…?」
表に出てみると、それはモンゴルでよくみられる移動式住居ゲルであった。
そしてほぼ時を同じくして私は見てはならないものを見てしまった!
係の者らしい人間が近寄ってくる。
「ヨクネムッテタネ~。イマデ3ジカンネ~」
「しまった!」
時間貸しの罠に嵌ったことを自覚した私は家族を強引にゲルから引きずり出し、一目散に逃げ出した。
「オキャクサ~ン!」
後ろで明らかに代金を請求する意図を込めた係員の声がする。
(聞こえない聞こえない、ああ~何にも聞こえない)
心の中で念仏を唱えるようにして私は雑念を取り払った。
最早この牧場内に留まることはできないことを家族全員が理解していた。
私達は素早くパーキングに待機させておいたイエローサイドブレイクスペアタイヤ号に乗り込み、只管魔界からの脱出を試みた。
走っても走っても同じ景色が続いた。
空だけは青く晴れ渡っていたのだが、
急転、黒雲が立ち込め…
周囲の景色が一瞬色を失い、上空で閃光が!
私はいつしか気を失ってしまった…
どのくらい時が経ったのだろう…。
遠くで家族が私のことを呼んでいる声が聞こえる
気が付くと、私は自宅のリビングの椅子に座っていた。
ダイニングで妻と娘がパンを焼こうとしているようだ。
娘がテーブルの上のレシピを取ってくれと言っている。
今日はバターも手作りにするのだと。
「ああ、これか」
テーブルの上にバター作りの手順を書いた
レシピが確かにある。
そしてレシピと重ねて入場券が置いてある。
(まかいの牧場…?)
「楽しそうな処だね、今度みんなで行ってみよう」
私の問いかけに妻と娘が顔を見合わせて(やれやれと言わんばかりに)笑った。
魔界の牧場 終わり
※この物語に登場する人物・団体は全てフィクションです。
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