『爆弾』呉勝浩 を読みました。


以下感想 ※ネタバレあり





取調室で爆発テロを予言する「スズキタゴサク」の正体と事件の真相が気になり一気に読んだ。


最初スズキはドストエフスキーの小説に出てくる「愛すべき酔っ払い」のようなキャラクターなのかと期待したが、なかなか食えないやつで、同情や共感は私はあまり沸いてこなかった。


むしろ最後まで憎たらしい感じを残しつつ退場したので、ハリウッド映画のパーフェクトな悪役に近しいような。


田舎者なので東京の地理に不案内だし地図で確認しないまま読み進めたけれど、東京の地理を知っているとより一層謎解きの楽しさが増すのかもしれない。


一刻一秒を争う、爆発の謎解き。刑事たちとスズキとのやりとりがとてもスリリングが面白かったです。

スズキの冗長なお喋り(特に後半、類家との語り)は鼻についてちょっと読み飛ばしちゃいましたが、それ以上にぐいぐい引き込まれて止まらなかったです。


一番私が印象に残ったのは、「恥ずべき不祥事」を起こした警察官長谷部と、それを目撃してしまった等々力の回想です。


そこでやっと、なぜ等々力が長谷部を庇うような発言をしたのかが分かる。


ルールを踏み越えるに値するひとりの仲間。

踏み越えた先の代償。


「恥ずべき不祥事」を起こした長谷部を擁護した等々力も、仲間と見なされなくなった。


「なるほど、これが世の中だ。」等々力のつぶやきがヒリヒリと胸に刺さりました。