祥月命日だから


プリザーブドフラワーも

八重咲きのゆりも

マカロンとラーメンのろうそく

ものいわぬあなたの前に

並べてみても






家族が手を合わせる

その姿を

見るにつけ

体は震え 骨が軋み

かさぶたは血を流し

眼が霞む 


ああそう

意識が

何層にも

幾重にも

どれが本物かまがいものか

どれも本物で擬態している


これからの

未来があったのに

いままでを

拾い求めるしかできなくて

いやだいやだ

ここにいるなら

きっと いいえ

絶対

笑顔でいるはず

だって

少しづつ願いがかなうんだよ

mの価値観が認められ

少しづつ世界がひらく

けど なのに

翔け抜けて逝くなんて

いまここで

笑顔に逢えない


どうしてすべてを愛おしく想い

大事にしなかったのだろう

どうして身勝手な主観で

面倒だとか疏んだのだろう

ただ二人の母娘なら

何を差し置いても

mを優先すると

心に決めて産んだはずなのに

どうして 何に流されて 見失い

周りはまっ暗





横たわる姿を目の前に

あらがうすべも無く

形通りの葬送の儀

呼ばれても

椅子から立てなかった

なんでこの娘の写真に

焼香なんてしなきゃいけないの?

意識は

何層にも

幾重にも

どれが本物かまがいものか

どれも本物で擬態して



いたみ 痛み 傷み 悼み

ものいわぬあなたの前で

ほの暗い水面に横たわる様に





おかあさんにしてくれたのは

mなのにね

ありがとうね でも

さみしいよ

そっちはどうかな

笑顔でいるかな