娘を職場に送り

助手席からおりるうしろ姿をみたとき

なんともあらわし難いものが

胸の辺りにモワッと現れたような感じが

その瞬間 なぜか

このうしろ姿を わすれない

と感じた 

同時に変な 気がした

イヤな ではなく

へんな 


キレイに整えたさらさらの長い髪

花粉に悩みながら選んだ春らしい服

ひらりとスカートを纏い


それが 動く姿を眼にした最期

夕方迎えの連絡してね 

うしろ姿に声をかけたが

返事があったのか 記憶にない


病院の待合個室

娘さんの採血をさせてください

警察官が書類に署名をと

書きながら

余分にとってもらえませんか

持って帰りたいので

叶うわけがなかったが

まだあたたかい血を

この身にのみこんだなら

もう一度、もう一度と…



繋ぎ止められなかった

欲しがったものを

惜しみなく与えていたなら

愛してるよと

もっともっと声にしていたなら

思い留まってくれたろうか



部屋のロフトで見つけた

お気に入りの人形やぬいぐるみたちがいた

娘の赤ちゃんのときの掛布団とともに

この布団もらっていい?と聞かれて

どこに持ち出したのかと思っていた

この空間で ひとりで

何を考えていたのだろう

ほこりが降り積もり



仕事の書類

4月の末日を 28日と書いてしまった

29日30日  3年前からわたしにはない



遠い遠い

好きだった南の青い空

どこにでも自由にやすらかに

赦されるなら

かわいいわたしの娘 この胸に抱いて

もう一度、もう一度…