海外の学校は9月から始まるので大体の人は3月に卒業した後、エージェントのプログラムか何かで海外のランゲージスクールで準備体操を済ませるのだろう。僕は中学校を卒業してからすぐ現地の学校に入った。トライアルの期間だったので単位はとらなくてよかったが、やはり語学学校とは違う。これは言わばプールに入水する前に体に水をかける行為があるが体温を調節せずにそのまま飛び込んだ、と思ってもらえればわかりやすいかもしれない。下準備はしていないのだから、ある程度の拒絶反応はでる。初日には、ESLの先生にそれなりのサポートを受けたが、やはり1から100まで全部やってはもらえなかった。指定されたロッカーや教室の位置がわからず涙目になったのを覚えている。その学校には日本人留学生の女の子が一人いたが、その人もたくさんのことを教えてくれるわけではなかった。その日とその後の三日ぐらいは一緒にお昼ご飯を食べたりしていたが、その人にはその人のグループがあったので僕はとりあえず孤立してみることにした。

さて、もしあなたが「外国の人はフレンドリーだ」と考えているのであれば、そのイメージは捨て去ったほうがいい。あなたが話しかけない以上その先はない。「外国の人」はフレンドリーではない。あなたの思っている外国の人はあなたと同じ人間なのであって、言葉がしゃべれなくて常に受身の姿勢をとっている人には話しかけにくいものだ。人間は人間なのであって国民性や先入観という背景はそれぞれにあるが、個々でみればあまり関係のないことだ。あなたがもし日本語のしゃべれない外国人に気軽に話しかけることのできる人なのであれば、あなたの周りにも自然とそういう人が集まる。人間はそういうものだ。結局のところ留学先で友達ができないと悩む学生とそうでない学生の差はそこだ。日本人という人種は比較的そこで苦手意識を感じてしまう人が多いのかもしれないので、もしあなたがそこで苦労するタイプの人間なのであれば、あなたは自身の殻を破らないと変わることはできない。ちなみにカナダの学校は留学生の受け入れが盛んなので、留学生が学校にいることが当たり前になっている。一般の日本の高校に留学生が転入してくればある程度話題にはなるが、あなたが行く学校は少なくとも”留学生を受け入れている学校”なのであなたのほかにも留学している人がたくさんいるのかもしれない。あなたは珍しくはないのだ。私たちが白い肌の人をまとめて「白人」や「外国人」とまとめたりするように現地の人も黒い髪の毛の人間は「アジア人」でしかない。これは自然なことであってレイシズムではない。あなたが日本人だと言い張っても、彼らからしたらどうでもいいことだ。したがって日本人が少ない地域に留学したとしても、あなたは日本人だからといってチヤホヤされることはないといっても過言ではない。あなたが自分から話しかけることができる、いわゆるポジティブな人であれば話は別だがその他の人には「日本人であること」というファクターはそこまで関係ない。
話をもう少し深く進めよう。上記にあることを踏まえて考えてみてほしい。留学生が同じ国同士で固まってしまうのはなぜか。実際僕もその一人ではあるので、自分を正当化するわけではないがこれは留学先で頻繁に起こっていることでそう珍しくもない。日本人が多い地域であれば尚更だ。しかしこれは現地のカナダ人にも同じことが言える。世の中はいつもトレードオフだ。強い目的があったとしても、それはあなたの天平に「現状に甘える」という選択肢があったときにどっちが優先されるのだろうか。僕の学校のESLの先生は、上海に4年ほど滞在したといったが、そのときにカナダ人と一緒に暮らしたという。日本にいる中国人や韓国人を見てほしい。東京の街中で聞こえる中国語は中国人同士のものだ。こういったことは身近によく目にするだろう。あなたがもし留学中に日本人としゃべってしまう、またはグループの中にずっといる、「甘える」ということを選んだとしてもそれはものすごく人間的にナチュラルなことだ。この甘えるという行為は新しい環境に対しての正常なレスポンスである。あなたがこれをどういった風にとらえるかは別として、あなたがもし留学前に明確な目的とそれに対しての意志力があったとしてもそれは本当に建前にすぎないし、実際に僕の周りにはそういう人がたくさんいる。しかしそれは悪いことではないし当たり前のことなのだ。
留学先を日本人が少ないところに指定する人が多いみたいだが、僕から言わせてもらうとそれはナンセンスだ。日本人がいようが自分の意思によってそれはコントロールできるし日本人の多い学校でも英語がものすごく上達している人はいる。日本人が少ない場所にいったとしても今はインターネットで誰とでも出会える時代なのでネットの中とはいえ簡単に人間関係が手に入る。結局本人は自分の選択しだいで甘えることができる、ということを頭にいれてもらいたい。

話を戻そう。僕はその3ヶ月の間にいろいろなことを経験した。初めて飛行機に乗り、知らない人と一緒に住み、etc そんなことは今となってはどうでもいい。その三ヶ月と一年、僕は常に孤立していた。初めて一人でご飯を食べた。ものすごく強烈だった。そのトライアル期間が終わるころには立派な壁が出来上がっていた。当時学校に在籍していた日本人留学生は短期留学だったのでその一年で日本へ帰った。日本人は僕一人、これは理想的な環境だととらえる人が大多数だと思うがそうでもない。上述した通りだ。壁ができてしまうと自分で壊すのは難しい。運よく外から力が働けばヒビは入るが内側から破壊するのは不可能に近い。そして向上心がなくなればそれで安定してしまう。繰り返すが世の中は全てトレードオフだと考えている。人間は意外に合理的なのだ。壁は人を遠ざける。今振り返れば僕には現地のネイティブと友達になれるチャンスはいくらでもあったし挑戦してみたこともあるが、しゃべるたびに気まずくなってしまう。これは僕の英語力が乏しいのではなく「壁」だと気づいた。

あくまでも僕の体験をもとにした”考察”でしかないのであまりマイナスな方向へ流されないでください。その人にはその人の体験があります。十人十色です。