地中海上空のハイジャック  2 | 世界珍ネタHunter!

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次の日、朝食が済むと4人の捕虜は「これから水上機でタラントへ送る」と申し渡されて、がっかりした。朝食の最中に脱走の相談をしていたのに、飛行機では当外れとなったからだ。水上機基地へ行くと、まるで映画のロケ現場のように、大勢のイタリア兵が集まっていた。乗せられるのは、前日と同じ型のカント水上機だったが、5人の搭乗員は別のメンバーであった。カメラを構えた兵士の一人が、20本入りのタバコをくれた。まるでお客様待遇なので、少々気がとがめたが、機体の中央部の機銃下に座ると4人は慌しく相談した。ブラウンが「この飛行機を操縦できますかね?」と小声で聞き、「誰だって空中に上がれば操縦出来るさ」と答えるや、ウイルキソンが勢いこんで「じゃ~この飛行機を上空で頂戴しましょうや」と迫り、ダンスモアが頷くと「コラ!話しをしてはいかん!!」と、中年の小柄の護衛兵がどなりつけた。09:15、カント機は静かな入江の水をけたてて、タラント迄一時間半の飛行の為に離水すると、ストレーバーは機内を注意深く見回した。機長の中尉の後ろに副操縦士の中尉が座り、その後ろに監視の陸軍伍長と無線士がいて、機首には機関士が座っている様だった。人数は5対4とやや不利だが、奇襲すれば何とかなりそうである。青い地中海の空をのんびり飛行しているとき、ウイルキンソンが近くの無線士に話し掛けた。胸のバッジを示し無線機を指差して「俺も同業だ」と身振りして見せると、相手はにっこり笑い返して握手する真似をした。この様子だと、どうやら作戦は上手く行きそうだ。監視兵は流石に油断せず、チラチラと4人に視線を走らせていたが、そのうち顔が青ざめてきた。どうやら飛行機に酔ったらしい。「しめた!」と思ったウイルキンソンが「スピットファイアだ!」と叫んで、右窓の外を指差した。無線士は恐怖の表情を浮かべ窓にかけよろうとしたが、そのチャンスを逃がさすにウイルキンソンは飛び掛ってアゴに一発お見舞いした。なにしろ故郷の牧場で6頭の馬を引いて羊を追っていた大男のパンチだから威力絶大だ。一撃で煽れた無線士をストレーバーが引きずりこんで、後の2人に渡すと、ウイルキンソンは監視兵の伍長に飛び付く。40歳を越えた小柄な男だからひとたまりもない。奪い取ったピストルを投げると、ストレーバーが受け止め、この哀れな伍長も捕虜にされてしまった。騒ぎに気付いた機長が機首にころげこんでピストルを引き出し、ストレーバーに狙いを定めた。銃を構えた2人の間に凍りつくような沈黙の時間が流れた。2人とも発砲をためらう理由があった。ストレーバーは射弾がそれてエンジンに命中して墜落することを、機長の方は人質になった仲間2人の生命を懸念したからだ。この沈黙を破ったのは、機関士の間抜けた行動だった。それまで居眠りでもいていたのか、突然立ち上がったこの男は、よろよろと機首へ逃げこもうとして、2丁のピストルの中間に身をさらしてしまった。「今だ!」ストレーバーとウイルキンソンの2人は飛び出して、機関士に体当たりを食わせ、機長もろとも押し倒した。機長のピストルは、その衝撃で機内の何処かへはじき飛ばされた。残るは副操縦士だが、この男は彼なりに騒動の鎮静化を図ろうと、操縦桿をぐっと前に押して機を急降下に入れた。気付いたストレーバーがピストルを突きつけて、「アップ!アップ!」とどなる。凄まじい形相のストレーバーの顔を見た副操縦士は観念したのか、スロットルを入れて機体を水平に立て直した。前代未聞のハイジャクは見事に成功した。4人のイタリア人はベルトで縛られて機の後部にころがされ、ストレーバーとウイルキンソンは奪ったピストルを副操縦士に突きつけて監視に当たる。脅えた副操縦士はどう飛行して良いのかわからずに「アフリカ?」と聞く。「アフリカじゃない、マルタだ!」と命じると、男は恐怖の表情を浮かべて「スピットファイア!」と繰り返し叫んだ。言われてみると、確かにその通りだ。この間々マルタに向かったら、友軍のスピットファイアに迎撃されて叩き落とされるのは目に見えてる。しかし他に代案はない。ストレーバーは機長席について、機を低空に下げ、海面スレスレで飛行する。この間々南方へ飛行を続け、イタリア本土に突き当たった所で針路を変え、シシリー島の南端に達したのち、220度のコースでマルタへ飛行する事にした。その内左前方に小さな黒点が現れた。じっと注視していると、どうやらドイツ空軍機のJu52輸送機らしい。高度300フィートでイタリアへと向かっているようだ。ブラウンは上方銃座についた。ストレーバーが翼を振って挨拶すると、向こうも同じ様に翼を振って返礼し、2機は別れた。その後は何事も無く、飛行は順調に進み、マルタに近くなってきた。航法は全て推測だったので、そろそろ見える頃だと心配になったストレーバーが風防を通して4周見回すと、高い無銭柱らしいものが目に飛び込んできた。「もう着いたのか」自信がないままに目をこらしていると、ダンスモアが「神様!見ろよ」と金切り声を上げた。1、000フィート上方に4機のスピットファイアが一列になって、雀を襲う鷹のように襲いカかってくる所だった。




つづく







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