薬4 | 木のうろ

薬4

仕事の合間に精神科に行く。
今日が校了なのに未だにイラストが一点届かない。

この日記に書いたようなことを、先生に話した。
相手のために自分を磨く、ってことは欺瞞だってこと、
結局そんなことは相手に頼まれた訳でもなく、
自分のこころを守るための方便だったってこと。
だから今は、部署替えも控えているし、
自分自身のために自分自身を磨いていきたいと言った。

先生は、こういう経験は風邪みたいなもので、
経験するたびに抗体ができて、対応できるようになるんです。
ただ、その痛みを無理に我慢しよう、サディスティックに自分を
責めようとしなくてもいい。風邪をひいているときに、
招来もっと強くなるようにとわざと薄着でいる人なんていないでしょう?
鎮痛剤もあるし、解熱剤もある。辛いときはそういうものに頼っていいんです。そう言った。

「こういう辛い経験をして、ちゃんとしたおじさんになっていくんですよ」と言った先生の姿が印象的だった。

ネクタイも締めずシャツにジャケットで、髪も長めの、「きちんと」なりきれていない己に対しての、善意に満ちた揶揄のようにも思えた。

薬についての説明も聞いた。
今飲んでいるのは、レキソタンという麻酔薬のようなものと、パキシルという向精神薬。前者はいろんなことが思い出され、ストレスに耐えきれなくなったときに精神を鈍麻させるもの。飲んで五分~十分で効果が現れる。後者はセロトニンという脳内物質の分泌を増大させ、外的なストレスにたいする抵抗力を高める薬。これは飲んでから二週間ほどしないと効果を発揮しない。

レキソタンをやめるタイミングは簡単です、と先生は言った。
昼間レキソタンを飲んで、眠くなりますか?と問われ、いいえ、
と答えた。レキソタンは麻酔薬なので、こころが正常な場合には麻酔は不必要な眠気として現れる。だから、夜睡眠をとって(おかげで夜は睡眠がとれるようにはなった)まだレキソタンを飲んで眠くならないということは、まだあなたのこころと薬のバランスが拮抗しているんですよ、と。なるほどと思った。

仕事をしながら、先日上野で飲んだ相手とメールをしている。
話もかみ合わないし、相手がしゃべる自分のことにこちらが合わせているような、会話未満のメールだ。
それでも、誰かとつながっている感触がおぼろげにでも得られることはありがたい。

そう、ありがたい、と思うことが、まだ薬とこころが拮抗しているということなのだろうか。

このまま彼女に連絡を取らなくてもよい気がしてきた。
向こうは友達でいましょう、友達でいたいと言った。
しかしそれは別れの常套句だろう。
あなたが辛ければ、このまま会わないほうがいいだろうとも言われた。

二月三日は恵方巻きの日だ。彼女は恵方巻きをかぶりつくのが好きだった。その日にでも、かぶりついてるかね、とでもメールしてみようか。