新・削偽定実
ブログ開設1年。
古代史の勉強の備忘録としてブログの機能を利用しようと思い、昨年の1月3日に当ブログを開設した。
開設はしたもののいざ何か書こうと思った時に、備忘の対象が何もないことに唖然とした。
そんな時、梅原猛の論文「新哲学創造の理念」を読む機会があった。
「現代社会は科学技術文明によって人間が受けた恩恵と引き換えに地球環境を破壊し、多くの動植物を絶滅させ人間そのものを危機に追い込んでいる。」
という警鐘から始まる論文だった。
(第一回ブログをご参照ください。 http://blogs.yahoo.co.jp/rich036kit/1104474.html)
梅原の危機感は的中し、3月11日に東日本大震災が発生し、科学技術文明の象徴でもある『原子力発電所』がメルトダウンを起こし日本列島を危機に陥れてしまった。
『原子力発電』を推進する人たちは原子力の持つ危険性を十分知りながらあえて目をそらし、人間社会にもたらす利益ばかりを強調した。
国内外の政府はその理屈を承認した。
『原子力発電』に関わる技術者も、企業も政治家もジャーナリストも、あるいは電力を享受する我々も、自分たちに都合が良いように解釈して、『原子力発電』是認の世論形成に協力した。
この世論形成のメカニズムは、天武帝が国史編纂を企図した時の『削偽定実』
のコンセプトとよく似ている。
自分たちに不都合なことは「偽」として排斥し、都合がよいように「実」に書き換えてしまう。天武天皇はそうやって『万世一系』を創り上げさせた。
世論形成のメカニズムと言った意味で、『原子力発電』と『万世一系』は似ている。
世の中を動かす構造は昔も今も大同小異のようだ。
歴史に対する興味の大きさは現代の事物への関心の強さに起因している。
自分が喋っている言葉、自分の苗字、近くの神社やお寺などの起源や源流に興味を持ち、歴史を調べてみると現代を理解することにつながる。
古代史の勉強のモチベーションはそんなところにあるのだろう。
したがって意図的に捻じ曲げられた歴史では正しく現代につながらないので役に立たない。
天武天皇が創り上げようとした「削偽定実」では意味がない。
知りたいのは現代までつながっている本当の史実であって、創り上げられた虚偽の記述ではない。
学者たちが自説を守るために作ったこじつけの論理でもない。
記紀に書かれた豊富な記述を本来の意味で「削偽定実」を行って、より正確で偏りがないフェアな歴史認識につなげていきたいと思う。