中国に媚び「万里の長城」映画、でもマット・デイモン主役…ハリウッドご都合主義“人種差別”世界が激怒
さて、今週ご紹介するエンターテインメントも先週に引き続き映画業界のお話でございます。
本コラムではこれまで、2013年4月21日付の
「検閲大国・中国に屈する悲しきハリウッド…『世界2位の映画市場』
札束で頬を叩かれ」や今年3月30日付の
「公害大国・中国におべんちゃら、レオ様、世界から失笑買う…エコ気取りもビズ優先、見え見え」
などで、2017年には米を抜き世界最大の映画市場に成長するとみられる中国に
ハリウッドが媚(こ)びまくっているというヘタレな状況について、
何度もご説明いたしました。
そして、そうしたハリウッドの中国へのすり寄りぶりはますます、露骨になっています。
例えば2013年公開の宇宙SF「ゼロ・グラビティ」(アルフォンソ・キュアロン監督)では、船外活動中の不慮の事故で宇宙空間に放り出された
サンドラ・ブロック演じる医療技師ライアン・ストーン博士が数々のピンチを切り抜け、中国の宇宙ステーション「天宮」にたどり着き、最後は中国の有人宇宙船「神舟」で
地球への帰還を果たします。
そして昨年公開の宇宙SF「オデッセイ」(リドリー・スコット監督)では、火星にひとり取り残されたマット・デイモン扮する宇宙飛行士マーク・ワトニーの救出作戦に乗り出すも、手詰まりになった米航空宇宙局(NASA)に救いの手を差し伸べた“救世主”が何と、中国の宇宙開発を担う中国国家航天局(CNSA)でした。
団塊ジュニアより上の世代のみなさんなら、この2作を映画館でご覧になった際「あー、ひと昔前やったら絶対、中国ではなくて日本の宇宙船が出てきたはずやで!」とうっすら悔しい思いをしたはずです。 記者も前述したような裏事情を知るだけに、映画館で何とも悲しい気持ちになりました。
それだけではありません。
最近はハリウッド映画の製作そのものに金を出し、
ちゃっかり製作陣に加わる例も急増しています。
2015年公開の「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(コリン・トレボロー監督)には 中国の電子商取引最大手、アリババのグループ企業である映画会社、
アリババ・ピクチャーズが出資!。映画の冒頭、アリババのロゴマークがスクリーンにどーんと登場し、面食らった洋画ファンも多かったはずです。
札束で映画を…必ず
“救世主=中国”というストーリー
そして、またもや新たなハリウッドのすり寄りぶりが明らかになり、世界が失笑しているのです。今回の本コラムでは、そんなお話を中心に、いまのハリウッドと中国との関係についてご紹介したいと思います。
7月29日付で英紙ガーディアンやBBC放送(いずれも電子版)など
欧米主要メディアが呆れながら伝えているのですが、
記憶喪失の米中央情報局(CIA)の工作員が主人公の米スパイ映画、ボーン・シリーズなどで知られるハリウッド男優、マット・デイモンさん(45)が、
北宋時代(960年~1127年)の中国を舞台に、万里の長城(ユネスコの世界遺産ですな)の起源や謎に迫る 米中合作映画「The Great Wall(万里の長城=原題)」(チャン・イーモウ監督)で主役を演じていることがわかり、
世界中から「何でやねん!」という怒濤(どとう)の突っ込みがわき上がっているのです。
エジプトのピラミッドと同様、いまだ謎の多い万里の長城が題材の作品の
主人公がなぜ中国人ではなくアメリカンなデイモンさんなのか。
世界中の誰もが疑問を抱くはずです。
さらに、デイモンさん以外にも、スパイダーマンのシリーズでおなじみの
ウィレム・デフォーさん(61)や ペドロ・パスカルさん(41)といった ハリウッドの人気俳優が。 無論、中国からもアンディ・ラウさん(54)らが出演していますが、腑(ふ)に落ちません。 そんな疑問を抱きながらユーチューブで予告編を見たのですが、椅子からずり落ちそうになりました。
過去最高154億円かけ理解不能な
「1000年前、白人の率いる中国軍が万里の長城で
怪物と…」
なぜなら、重厚かつ荘厳な歴史大作かと思いきや、
万里の長城を埋め尽くすデイモンさん率いる大勢の武装兵たちが、激しい大爆発&火柱が上がりまくる中、人間離れしたジャンプで敵に向かっていったりと、ノリは完全にハリウッドの脳天気な娯楽大作…。
しかし、それもそのはず。7月28日付の米週刊誌エンターテインメント・ウイークリー(電子版)によると「この作品、実はモンスタームービー」だというのです。
つまり、
デイモンさん率いる中国の武装兵が、万里の長城に迫り来る怪物と激しい戦いを繰り広げるという内容らしいのです。
ちなみに製作費は約1億5000万ドル(約154億円)。中国で撮影した映画では過去最高額といいます。配給はユニバーサル映画、製作はレジェンダリー・エンターテインメント。
ご存じの方も少なくないと思いますが、このレジェンダリー、
もともとワーナー系の映画製作会社だったのですが、
今年1月、中国の不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)によって35億ドル(約3600億円)で買収されました(2016年1月11日付米紙ロサンゼルス・タイムズ)。
ワンダ・グループは2012年に米大手映画館チェーン「AMCエンターテインメント」を買収し、世界最大の映画館の運営会社になるなど、ハリウッドに急接近を図っています。
説明するまでもないですが、近く、世界最大の映画市場になる中国にすり寄り続けるハリウッドと、巨大なハリウッド・ビジネスの利権に食い込みたいワンダ・グループの思惑が一致して出来上がったのが本作というわけですね。
「初恋のきた道」(1999年)などで日本でも有名なイーモウ監督(64)は、本作の製作意図などについて、前述のエンターテインメント・ウイークリー紙にこう述べました。
「2008年の北京五輪のセレモニーを演出し、自信が付きました。
私が真に望むことは、中国のカラーや文化的背景を世界中の人々に映画という言語を通じて伝えることです。われわれは中国の文化を(世界に)紹介するために映画製作(という手法)を使ったのです」
そして本作の内容について「あくまでもファンタジー映画であり、モンスターは古代中国の魔物です。しかし、
実際に起こった出来事のように描きたかったので、モンスター以外のさまざまな事柄についても科学的・歴史的な研究を積み重ね、リアリティーを追求しました」と訴えました。
人種差別を助長する“美白”映画…の声
本作は中国で今年の12月、米国などでは来年の2月17日に公開されるそうですが、欧米では監督のこの説明を額面通り受け止める人はいません。それどころか、本作の予告編がユーチューブに投稿された7月28日以降、日本人が考えている以上の大変な非難が巻き起こっているのです。
例えば7月29日付の米CNNニュース(電子版)が報じていますが、
本作について、台湾系米国人の人気女優、コンスタンス・ウーさん(34)がツイッターで
「白人男性だけが世界を救うことができるという人種差別的神話は永遠に終わりにせねばならない」「このような作品が長らく存在し続けているハリウッドというのは病気である」「この作品は実際の事実に基づいていません。われわれのヒーローはマット・デイモンのような人物ではなく、(2014年にノーベル平和賞を受賞した女性人権活動家の)マララ・ユスフザイやマハトマ・ガンジーやネルソン・マンデラのような人たちです」と訴えるなど
“ステレオタイプの人種差別を助長する映画”との怒りの声が広がっているのです。
実際、前述したガーディアン紙やインディペンデント紙といった欧米主要メディアも、本作に関し、ウーさんが訴えたような非難があちこちで高まっており、それをハリウッドに昔からある都合のよいごまかし(Whitewashing=ホワイトウォッシング)が原因であると非難しています。
ハリウッドにおけるホワイトウォッシングで最も有名なものは、超大作「クレオパトラ」(1963年)で主人公(古代エジプトの女王)を英国生まれの白人、故エリザベス・テイラーさんが演じたことですが、他にも、実話に基づいた政治スリラー「アルゴ」(2012年)で、白人男優のベン・アフレックさん(44)が演じた主人公のCIAの技術運用担当者(トニー・メンデス氏)が実際はメキシコ人とのハーフだったりと、枚挙にいとまがありません。
平たく言えば、ヒーローやヒロインは常に白人でなければならないという“白人優位思想”の成せる技なのですが、この古くて新しい“人種差別問題”に火が付いてしまったというわけです。
しかし、ここまで読んだみなさんの多くは「中国人の観客はそんなこと気にせんわ。ハリウッド・スターのマット・デイモンが主演やし、金のかかった娯楽大作やから、何も考えん連中でどうせ映画館満員やろ」と考えたのではないでしょうか。
少し前まではきっとそうでした。だがしかし。最近、中国人もハリウッド映画のご都合主義に疑問を持ち始めているようでもあるのです。
8月17日付の米業界誌ハリウッド・リポーター(電子版)が伝えているのですが、中国国内の7月の映画チケットの総売り上げが前月比で18%減を記録。そのせいで、ここ5年で初めて対前年比でマイナスとなったのです。
イケイケドンドンで映画需要が急拡大していた中国ですが、ここにきて急ブレーキがかかったのです。原因について業界ウォッチャーは有力作がなかったためとみていますが、中国では5月公開の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(監督=ジョー・ルッソ、アンソニー・ルッソ)など大ヒット作もあったはずです。
ハリウッドも、それに乗っかろうとする中国の映画業界も、中国の観客の動向に変化の兆しが現れていることを真剣に受け止めるべきでしょう。(岡田敏一)
【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。
http://www.sankei.com/west/news/160916/wst1609160001-n1.html
シナは崩壊なんてしません。 世界中でどんどん影響力を強めています。
でも、この評論家のように、シナの異常性を世界の人達・国々が認識するようになるのではと期待はしたい!!