再録:2005年11月<ニュー・シングル「ラヴ・アライヴ」について> | ノーナ・リーヴス オフィシャルブログ「LIFE」Powered by Ameba

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西寺郷太・奥田健介・小松シゲル NONA REEVES



2005年11月

<ニュー・シングル「ラヴ・アライヴ」について>

 この曲の原型が出来たのは、今年(2005年)の2月上旬です。まず、Aメロのベース・ラインが頭の中で鳴りました。フレーズがシンプルかつクールでとても気に入ったので、何度もそれをループさせながらじょじょに上にのせるメロディを練っていきました。

 その後、サビを数種類考えたのですが、最終的には奥田と相談しつつドカーンと開放的に広がっていき大合唱になるような構成を選びました。
 「ラーヴ・アーラーイヴ」というサビの後に、「ララララララ・ラヴ!」という大サビが来るのですが、ここで爆発するラテン・ビートが来ることで、スティーヴィー・ワンダーの「アナザー・スター」のようなムードが出せれば、Aメロのひんやりしたディスコ感との組み合わせが面白いのでは?と考えました。

 ちなみに「ラーヴ・アーラーイヴ」という言葉はメロディと同時に出てきたので採用しましたが、ネイティヴの英語的には、俗語表現で「夫婦生活」みたいな、「結婚しても性生活を持続させよう」という意味もあるらしくて・笑、最初迷いました。ただ、「ま、これ以上ピッタリくる言葉もないし、いいか」とそのままでいくことに(^_^;)。もちろん、「愛をそのままキープする」、「愛はずっとここに生きている」という素直な意味で歌に使われることも多いので、開き直れば大丈夫なんですがね・笑。

 その頃、ドラムの小松のセッション・ミュージシャン業が多忙だったので、奥田とふたりで、かなりキチンとしたデモテープを作りました。出来上がった後に小松に聴かせたところ好反応でしたので、そのまま世界観をおしすすめることにしました。
 当初から、サビは、ぼくたちの今までの曲で言うなら、「ラヴ・トゥギャザー」、「パーティは何処に?」のアッパーな感じ、ループするAメロでは「リズムナイト」や「イージーラヴ」のクールでダンサブルなフィーリング、このふたつを組み合わせたかったんですが、バランスの配分を間違えると中途半端な出来になってしまいます。

 そここそがこの曲の「鍵」でした。

 こういった曲の場合、基本的にはすべてリズムをコンピュータで打ち込む方が楽です。世の中には沢山のリズムの素材が溢れていますし、調整もしやすいからです。ただ、ぼくはノーナ・リーヴスのサウンドの「肝」は、小松が叩く生のドラムだと思っています。ですので、出来るだけ生演奏でベーシックな部分は構築したいなと思っていました。

 ぼくらの世代のバンドのほとんどがリズムの問題でこれまで色々なトライアルをしてきました。言うまでもなく、ドラム、リズムはまさにバンドの、すべての音楽の命なんです。
 2000年前後に日本でも沢山のバンドがドラマーがいるにも関わらず、コンピュータでリズムを打ち込み、ダンサブルで実験的なシングルをリリースし、刺激的な作品が生まれました。しかし、ぼくは敢えてオーソドックスな生演奏にこだわっていました。

 それはその頃、同時に出てきたポップで斬新なラップ・グループやヒップホップ・ユニットと競争した場合、サンプリングや打ち込みの達人の彼らと同じことをしては、「バンド」の勝ち目はないと考えたからです。

 しかし、です。ぼくらの周りにひとりだけ、生のドラムと打ち込みのリズムを完璧に融合させ、この曲をまとめられる人物がいました。その人とは、ぼくらのやっている草野球チームの監督であり・笑、学生時代から3人の先輩だった、元シンバルズのドラムの矢野さんです。
 矢野さんは、矢野さん自身が現在進行形でスキマスイッチでサポート・ドラマーをされている最高のドラマーなのですが、同じくらい打ち込みのマエストロでもあります。それに14年くらいのつきあいでメンバーそれぞれの性格や音楽のとらえ方を熟知してくれています。そこでぼくらは、この「ラヴ・アライヴ」の難しいバランスをとる仕事をプロデューサー矢野さんに託すことにしました。

 その後、数週間かけて、小松、奥田、ベースのちがさき、パーカッションの赤間慎、この4人が思いっきりノリノリで演奏した録音データが、コンピュータ上で矢野さんのプログラミングと絶妙にブレンドされていきました。エネルギッシュなリズム、パーカッシヴでグルーヴィーなサウンド、中間部でのブレイクビーツの攻撃的なアプローチ。「ラヴ・アライヴ」は今までのシングルではもっともクラブ・ミュージックよりのプロダクションなんですが、結果的には限りなく「ノーナ・リーヴスらしい」音像に仕上がったのです。

 レコーディング最終段階で、矢野さんから一本の電話がありました。「この曲にライムスターの宇多丸さんをゲスト・ラッパーとして迎えられないだろうか?」という内容でした。ぼくは突然の話に驚いたんですが、妙にそのアイディアに納得しました。「それしかない!」と思ったんです。そこで、ぼくは宇多丸さんにお願いの電話をしました。

 この組み合わせを、意外に思う人もいるかもしれませんが、宇多丸さんは、ミュージシャンの中でも1、2を争うくらいのノーナの音楽の良き理解者です。ぼくも昔から、もちろんライムスターの大ファンだったんですが、宇多丸さんもノーナを同じように好きでいてくれていました。何年も前から「申し訳ないと」というイベントでDJとして共演?させてもらっていますが、そこでもノーナの楽曲をヘヴィ・プレイ。オーディエンスも熱狂です。ガシガシ繋がれていく曲の渦の中に、絶妙のタイミングでノーナが現われるとぼくはいつだって胸が熱くなります。
 さらに宇多丸さんは、ぼくが学生の頃からヒップ・ホップ、ブラック・ミュージックのガイド・ブックや、数々の連載などで、批評家としても独自の鋭い視点を持ち、その点でもぼくは大リスペクトしています。その宇多丸さんにノーナの音楽を素晴らしいといってもらえることは、本当に嬉しかったのです。

 数年前から、ぼくはいつか一緒にコラボレーションしたいなという夢を持っていたのですが、矢野さんの「宇多丸さんがこの曲に必要だよ」というひとことで、「あ、今だ・・・」と思ったんです。

 出来上がりは聴いての通り。「すいませんが、一言言わせてください・・・、『最高で~す (^~^)!!!!』」、そんな感じです。
 ミックスが完成した夜、新宿でミーティングされていた宇多丸さんを、スタジオ終わりのぼくが車で迎えに行きました。その後カーステの音量を上げ、ふたりで「ラヴ・アライヴ」をガンガン聴きながら、東京の街をドライヴしたんですが、達成感、満足感、興奮がすごかったです。「音楽ってほんと最高だ!」とふたりで狂喜乱舞したんですが、「幸福なコラボレーション」という表現がぴったりの夜でした。

 「ラヴ・アライヴ」は大人の恋の歌です。「青春なんか遠い昔、忘れてた」という歌詞がありますが、来年でノーナ・リーヴスもファースト・アルバムをリリースしてから10周年ということで、知らない間にちょっとしたベテラン・笑、になっています。「中学生からファンでした」とかクラブで声をかけられることも多く、おじさんびっくりしてしまいます(^_^;)。

 沢山の同じ世代のぼくが大好きだった仲間たちのバンドが「解散」や「休止」といった形で歴史を終え、それぞれのメンバーはまた新しい一歩を歩んでいます。

 でも、ノーナは続いています。そういった観点でも「ラヴ・アライヴ」の「愛はずっとここに生きている」んだ、世界がもしも終わっても「愛があったという事実は消えないんだ」、というシンプルでポジティヴなメッセージは自分にとってもズッシリくるものでした。

2005年11月
西寺郷太

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