ずっと放置していた過去のところですが、
中途半端なところで終っていたため、続き書きたいと思います。
9か月も放置していた・・・・・・
色んな心持があり、どうしても書く気になれなかったけど、なったので、また始めます。
ちょうど去年の今日。
久しぶりにチェウと会ってから、時計が動き出して、
チェウといると、愛しさも悲しさも、幸せも苦しさも、全部がとてもリアルに迫ってきて、
めまぐるしい一方で、
生きてるな、とちゃんと実感できるようになった。
死んだように苦しくって、そんな風に日々を過ごしたことは、
とっても苦しく、
だけど、連絡とって、会うようになってからは生活も好転してきたように感じます。
今でも、やっぱりチェウは長旅にいったまま、二度ともう私の前には現れないんじゃないかな、
幻だったんじゃないかな・・・・・・
と思えてきたりします。
でも、今、またチェウが自分の目の前からいなくなっても、
もう前ほど、どん底に落ちることはないと思う。
あと、彼女できて帰ってきたとしても、
前ほどまでどん底に落ちることも、ないと思う。
(相当つらいとは思うけど・・・・)
チェウにとって、私は特別じゃなくても、
私にとってチェウは特別だった。
だからこのブログに、自分の気持ちを置いて、整理したい。
以前までのところは、目次から見てください。
→ 目次
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陽の光を浴びてぬるくなったビールを捨て、
チェウと砂浜を歩いた。
少し飲んだだけでもすぐに顔に出る私は、
さっそく顔が火照ってきていた。
そして、そんな火照った顔を太陽がさらに赤く染め上げているのが感じられた。
赤い顔を直視されるのが恥ずかしいので、私はチェウの前を歩きながら鼻歌を歌い、
時々チェウの方向を振り返ってはチェウが後ろにいるのを確認した。
「あなたって、ほんとにいつも楽しそうだよね」
嬉しそうに笑うチェウと、目が合うだけで心臓が高鳴った。
明るい場所で目が合うと、恥ずかしくなり直視できなくなってしまう・・・・・
席毛島(ソンモド)の浜辺には、ところどころ岩があり、
岩の上に登って寝転がっている人の姿も見えた。
私もチェウと近くの岩にのぼって、一息ついた。
靴を脱いで、裸足になったあしを岩にピタッとくっつけると、
いわのぬくもりが伝わってきた。
そんな私を横目にチェウは、気重そうに口を開いた。
「なつこ・・・・・・・私、実は今日、夕方から英語を教えにいかなきゃいけないの・・・・・」
イギリス帰りのチェウは、
知り合いの大学教授に英語の個人レッスンをしていて、かなり高い授業代をもらっていた。
「ほかの日にできないか聞いてみたんだけど、会社の研修に行ってたし、
最近、授業できてなかったから、やっぱり今日はいかなきゃ・・・・・・」
会社の研修合宿が終わってすぐにチェウに会ったので、
チェウはほかの用事もちらほらあるようで忙しそうに見えた。
「うん、いいよ!気にしないで。授業の時間までに、ソウルに帰ろう!」
「うん・・・・・ごめんね??
あと、授業でするところ、ちょっとだけ予習しとかなきゃ・・・・」
チェウはびっしり英語でうまったプリントを広げて私に見せ、
申し訳なさそうな顔をした。
せっかく一緒に海にいるのに、遊べないなんて・・・・・・・・
口では「いいよ」と言いながらも、私はひどく寂しい気持ちになった。
ここにはチェウの日常が広がっていて、私は飛び入り参加しただけのゲスト
近くにいるのにチェウが遠くに感じた。
だけど、そういう気持ちを口に出して言えない私は強がって、
「大丈夫だよ~!先生がんばって!私は海で遊んでくるねー」
と言って、岩から降りて裸足のまま海の方に向って歩いた。
きれいに見えた海は、
すぐ目の前にあるように見えたのに、歩いても歩いても、水面にたどりつけそうになかった。
潮が引いたからなのか、
砂がぬかるんで、一歩あるくたびに、足が下まで沈みこみなかなか前に進めなかった。
泥沼にはまり込んだように、足がどんどん泥に沈み込んでいって、
膝上までまくりあげたジーンズよりさらに上の太腿のあたりまで、足がはまりこんでしまった。
韓国の海って汚い・・・・・・・
海に入るまでにこんなに時間かかるなんて・・・・・・
一人で歩いてるせいか、時間がとても長く感じて、なかなか前に進めないのにイライラして、
韓国の海のイメージが悪くなった。
それでも、海の中に入りたくて、必死で前に進んでるうちに、やっと波打ち際にたどりついた。
海の中に足をひたすと、波が泥だらけの足を洗い流してくれ、
急に気分もすっきりした。
「なつこーーーーー!!!!」
後ろから私を呼ぶ声がした。
振り返ると、小粒のチェウがいた。
あれ、私、こんなに遠くまできっちゃってたんだっけ??
小さいチェウが遠くから、手を振っているのが見えた。
あたりを見回しても、泥沼をこえて海の中の方まで来ているのは私だけだった。
「どこまで行くのーーー???笑」
チェウは英語の予習が終わったのか、私を追いかけてこようとしているようだったが、
同じく泥に足をとられて、前に進めていなかった。
「どうやってそんな遠くに行くのーーーーーー?笑」
引き返そうとチェウの方に向って歩いたが、
再び泥地獄が待ちうけていて、思うように歩けなかった。
お互いに一生懸命、前に進みながら、やっと中間地点でチェウと会えた。
近くで見たら、チェウは元の大きさに戻っていた。
「やっと会えたね!」
2人で笑って、抱き合った。
「あなた、すごいねー!よくあんな遠くまで・・・・・笑」
「海に入りたい一心で歩いてたらいつの間にかね・・・・!
それにしても、ここの海、なんなの!?こんな歩くの大変な海は初めてだよ」
「私も初めてだよ~!やっぱり釜山の海がいいね!いつか一緒に釜山の海に行こうね!」
釜山出身のチェウは、時々、釜山の海の話をしてくれた。
「うん、そうだねー!あ、英語はもう終わったの?」
「うーん、大体は・・・・・・・まだ少しあるけど、なつこ見てたら、私も一緒にあそびたくなって!」
そう言って、チェウは私の頭をぐしゃぐしゃになでた。
「あー、やめてよー、髪の毛汚くなる!!!」
「もう汚いよ!!!笑」
泥をつけあいながら、浜辺まで戻った。
一人で海に向かって歩いている時は果てしなく遠く感じたのに、
帰りはチェウとふざけあって歩いていたら、すぐに浜辺に戻ってきてしまった。
泥だらけの足を交差させ、チェウの足と自分の足の写真を撮った。
「なつこも撮ってあげるよ」
髪の毛はぼさぼさで服はドロドロだったけれど、
チェウが撮った写真をみると、満面の笑みを浮かべている私がいた。
私は昔から写真が好きではなかった。
写真でみる顔は大抵が変な顔ばっかりで、
鏡でみる自分の顔も、大した特徴のない単調な顔に見えて、自分の顔を鏡で見るのも好きではなかった。
だけど、やっぱりチェウが撮った私は、いつも自分が見ている私とは違った。
とても嬉しそうで、どこかはにかんでいて、
微笑ましかった。
チェウと足洗い場で、水をかけあいながら泥を洗い流して辺りを見回すと、
いつの間にか陽が陰っていた。
ソウルに帰らなければならない時間が近づいていた。