その娘の名前をずっとまえに夢で見た。いままで聞いたことがないのでヘンな名前だなとおもった。ただ彼女の生涯がはげしいものだったので、それに見合うぐらい奇態な音を私の右脳があてがったのかもしれない、と思った。ラウラという名前だった。アニメキャラなのかと思った。けどアニメキャラなんてセーラームーンとかしか分からない。それもモー娘程度に何人いるとか言われても分からない。それならブリトニーのほうがくわしい。じぶんでなんでブリトニーにくわしいのか知らない。ブリトニーのCDなんていちまいも持ってないぜ。どうでもいいぜそんな事柄ってことばかり覚えているぜ。よく「資格の勉強したら?」と言われるぜ。よしてくれそんなフリーターを見るような目は。よしてくれマリファナをやってるという疑惑を持つ目は。「死なないでください。」・・「なんでみんなそういうの?(BYチバ)」
「ラウラが死んでしまえば世界のひとがみんな死ぬ」というはなしだった。ラウラというのは少女の名前だった。どこ地方のひとなのかもわからない。けど日本人の名前じゃないと思った。みな毒を煽ったりして死んでゆく。その死体をどろが押し流してく。そんな夢だった。
「ギャロップを見る?」
奥様がボーイを連れて、イブニングドレス姿で馬場へ向かった。お酒の飲みすぎて頭がガンガンしたが、馬場へいくとジミーは愛想をうかべて「いい馬がいるんです。」と奥様にいった。「もう二年も乗ってないのよ」「それならこのデビルがラウラ奥様をなれさせてくれます」
奥様の名前は彼女とおなじだった。その馬はデビルといった。
デビルといえば、その作者であるフランソワーズ・サガンも「悲しみよこんにちは」でデビューしたとき、「ちいさな悪魔」と言われたものだ。モーリャックにそういって絶賛されたとき、この18歳のちいさな悪魔はこう返した。「彼はつねに罪悪感にさいなまれてるのかもしれないけど、わたしにはないもの。」
馬は跳ね上がってラウラ奥様のからだを跳ね飛ばした。泥が顔に付いた。朦朧とする意識の中でわるい予感がした。馬場には昔なじみのジミー老人と、さっき出会ったばかりの少年。
ラウラが死ぬと世界が死ぬ
「その蹄を額に受けた。」でそのサガンの短編は終わった。「そういうことだったのか。」と思った。