それぞれの子どもたち



B子の子どもたちが施設にいるというのは衝撃的でした。
私自身、保育短大時代に保育実習の一環で乳児院や児童養護施設へ泊まり込みの実習に行った事はあったのですが、あくまでもこんな世界もあるんだという感覚にとどまっていたというか…自分の普段の生活と交わる事は無いだろうと思っていて、子どもを産んでなおその気持ちは強かったんです。
私が行った実習先があまり環境がよくなかった施設だったからというのもあると思うのですが…よっぽどの事がない限り、それこそ私と旦那が同時に死んだりしない限り子どもを預ける事は無いだろうとなと…。

でも、そうじゃなくても預けざる得ない状況になる事って案外身近にあったりするものなんですよね。
B子の場合は、詳しく事細かには聞いていないのですが『お互いを傷付けないために』という理由からでした。
B子自身が自分から連絡をして手続きをして期間を限定しての入所だったようです。

実は仕事をやめてそれに伴って保育園も退園していたんだと聞いて、上の子は年長さんだっただけにガラッと変わってしまった環境変化と小さなころから通った保育園を卒園出来なかった寂しさはかなり気持ち的に辛いものがあるだろうなと心が痛みました。


こんな時に『パパ』は本当に何をしてるんだろう…


B子の話を聞きながら頭に浮かんだのはA子から送られてきた写真にあった笑顔のB子旦那で、何だかふつふつと怒りが沸きました。
自分のせいで嫁は精神的に病んで子どもたちは乳児院。そんな中で…変わらず仕事…?
この頃B子の実親は亡くなっていたので、頼るとしても旦那の両親になるはずなのに…なんでその人達が一切話しに出ないの…?

いろいろと思うところはあったけど、でもB子旦那への怒りも義両親の疑問も私は言葉にする事はしませんでした。B子と同じ心の病気を持つ人が身近にいた私にとって、目には見えないその病気の恐ろしさは重々身をもって経験していたので。
そして全てを言葉にするとB子を追い詰めると思ったので…。


そしてこのラインのやり取りでもう一つ知ったのが、A子がこっちに引っ越してきているという事でした。

A子は旦那と離婚した後しばらくは戸建ての家にそのまま住んでいたのですが、結局売却し実家に住んでいたのです。
そこまでは知っていたのですが、どうやら変わった職場がこっちの方らしくて職場に近いこっちの地域に引っ越し、市営住宅に申し込んで当選したので今は私の家から割と近いところに住んでいると。


そうなんや〜と思いながらもふと、何でここまでA子の事をB子が知っているのかと疑問に思い聞いてみたところ

〔A子とは結構連絡をとってるから〕

と。

[え!?まじで!?]
〔うん。病気ので通院しはじめてすぐくらいから連絡とってる。はじめは嫌がらせのつもりでこんな診断おりたって連絡したのがキッカケで、そこからはちょくちょく…〕
[まじか…大丈夫なの?B子は…]
〔んーなんか、うん。まぁ。A子の監視も兼ねてるし〕

…何か、何だろう…理解が出来ない。

B子の気持ちもA子の気持ちも分からなくて、よくわからないドロッとした気持ちの悪い感覚が沸きました。

お互いどんな気持ちで連絡をとっているんだろう…


考えれば考えるほどに理解が出来ない事で[そうなんや]とだけ返して終わりました。



そして話題に出すとフラグが立つのか何なのか…
B子に聞いてからそんなに時間を置かずに私は遭遇したのです。

A子の、長女に。


その当時は「フラグ回収やん」と思っていましたが、改めて考えると『意識して見るようになったから気がついた』という方が正解だったのかもしれません。
久しぶりに見るA子の長女ちゃんは面影はあるものの当たり前に成長していたので、A子の長女ちゃんかもしれないと思って見なければスルーしてしまっていただろうなと思うからです。

長女ちゃんは小さな頃から変わらずA子の元旦那にそっくりで、でもやっぱり成長とともに凄く女の子らしくなっていました。


私が「あれ!?長女ちゃん!?」と声を掛けると、向こうも気付いていたようで「のんちゃんやろ」とニッコリと笑いました。
前に会ったのはそれこそ記憶にあるかどうかなレベルなのに、ちゃんと私を分かっていた事に驚いていると
「みんなでおでかけしたの楽しかったから、よく写真みてる」
と笑う長女ちゃん。
ずいぶん前にみんなで行った旅行の事なんだと分かって、もう可愛くて可愛くて「可愛いなぁもぉ〜!!」と抱きしめたのですが、ふと、コンビニなのに近くに誰もいないのに気がつきました。

「ママとか次女ちゃんは?」

あれ?と思いながら聞くと、長女ちゃんは

「ママは次女とおでかけしてる」

困ったように笑ってそう答えました。

その表情から、長女ちゃんが置かれている状況が透けて見えるような気がして背中に嫌な汗が吹き出しました。



 

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