ディマシュの歌*Love's Not Over Yet
感情の螺旋階段
静かに始まるピアノの旋律。
寄り添うような弦楽器の音色。
そして、ハープとホルンの響き。
ここまでの前奏18秒で、既に期待が膨らみます。
今年2025年3月7日にお披露目となったディマシュの曲「Love's Not Over Yet」は
8年もの年月を経て公開された、Dearsにとっては「待ちに待った」一曲です。
どうして8年も経ったのか、その辺りの話はのちほど紐解くとして
まずは、なぜこんなにもこの曲に惹かれるのか、久しぶりの「のん考察」にしばしお付き合いください。
多くの皆さまも感じていらっしゃるかと思いますが
ディマシュの曲の多くは、哀愁や憂いといった心情を表すような、短調(マイナーキー)ベースで作られています。
この曲も、全編通して哀切に満ちており
ディマシュに「合う」「合わない」と考えたとき
これは当然『ディマシュに合う歌』と、脳もココロも瞬時に識別します。
ですが、ちょっといつもより様々な感情に浸食されました。
そしてこのざわつく感情の正体を知りたくて、曲を繰り返し聴いたのですが、そこである特徴を発見しました。
それは、転調の繰り返しと、2オクターブ近く上昇するメロディーライン。
ちなみに転調とは、曲の途中で音の高さが変わること。
例えばカラオケに行って、キーが高すぎて「歌えないよー」と、途中でタッチパネルでキーを変えたりしますよね。
アレもある意味転調です。
ま、ま、ま、例えが上手いかどうかは今は置いといて。
とにかく今回の曲は、転調につぐ転調で
特にサビ部分では、2オークタブ近い音階の旋律で曲を盛り上げた上に、さらに転調も行われより激しい情動の高まりを誘います。
私はこれを「感情の螺旋階段」と名付けました←安定のネーミングセンス^^;
階段を駆け上がるかのようなメロディーの上昇
かと思えば、ゆっくりと回転しながら、一段一段感情を抱きしめながら上っていく...
ディマシュはアップダウンのある曲を今までにも多く歌っていますが
この曲では音階を複雑に行き来することで、いつも以上に高低差を際立たせているように思います。
そして転調のたびごとに、曲の場面が切り替わり
不安や悲しみ、慟哭、そして愛しさが往復。
さらには、ラストのサビ前のブリッジ的な箇所でさえもキーが変わり
そのままドラマチックに歌い上げ(ここのオーケストラ演奏のアレンジにグッときた!)
だけど最後に、ほんの少しだけ
希望の光が差し込んだような音で終わります。
階段は上りきったのでしょうか、それとも途中で下りてきたのでしょうか。
「I believe love's not over yet.../愛はまだ終わっていないと信じてる...」(訳詞:Noriko Brunel)
それは後悔なのか、それとも未来への期待なのか。
そんなことを考えながら、またリピートして聴くわけです。
8年越しの
冒頭でもお伝えしたように、この「Love's Not Over Yet」の始まりは2017年にまで遡ると言われています。
キーマンは主に2人。
一人は、グラミー賞を2度も受賞したプロデューサー兼作曲家のウォルター・アファナシエフ氏。
そしてもう一人は、フランスの作曲家でピアニストのフラヴィアン・コンパニョン氏となります。
時系列をざっくりまとめると…
- 2017年
・ディマシュ、フラヴィアンにフランスで出会う。※1
・フラヴィアンがディマシュの為に作った曲を、ウォルターに聴かせる。
・3人でドライブする。※2
※2 ディマシュInstagramより(2017年11月21日投稿)
後部座席・ディマシュ。
右・ウォルター・アファナシエフ氏(お髭の男性。)
左・フラヴィアン・コンパニョン氏
- 2018年
・中国で行われた「D-Dynasty』コンサートのリハーサル中に、ピアノ伴奏でディマシュが歌い、その音声が世界に拡散される。
- 2020年
・5月24日のディマシュの誕生日に行われたYouTubeライブで、視聴者からこの曲について質問を受ける。
・フランスでオーケストラ部分の演奏が録音される。
- 2023年
・フラヴィアンがSNSで「#LNOY」のハッシュタグと共に、「まじでもうすぐだから」的な投稿をする。
・ディマシュ、アメリカでウォルターとランチ。※3
※3 ディマシュInstagramより(2023年2月23日投稿)
左・ウォルター・アファナシエフ氏
中・ディマシュ
右・デイヴィット・フォスター氏。(グラミー受賞歴のあるカナダ出身の名プロデューサー。日本の歌手・松田聖子さんの「抱いて…」の作曲者でもあります。)
- 2025年
・3月7日、ディマシュのYouTubeチャンネルにてプレミア公開&各種音楽ストリーミングサービスにて配信開始。
本当にざっくりではありますが、おおよそこのような流れだと私は認識しています。
私が本格的にDearとなったのは2019年末の事。
2020年初めからとにかくディマシュについて情報を漁りまくっていた中で、あのリハ音声に出会いました。
「ディマシュのYouTubeチャンネルにも上がっていないけど、この美しい曲はなんだろう?」
そんな疑問をいだきながら、中国語やロシア語、英語やカザフ語など様々な言語で語られるエピソードを
Google先生(翻訳)に頼りながら、なんとか読み解こうと必死でした。
ただ、美しいピアノのメロディーと切なさの漂うディマシュの歌声が、世界中のDearsの心を一瞬でつかんだことはすぐに理解できました。
そして 「この曲、何ていうの?」 「フルバージョンはあるの?」 「いつリリースされるの?」 ──そんな声が次々と上がり、皆が恋い焦がれて待ち続けた一曲となった訳なのです。
クリエイター達の思い
一方でクリエイター達の思いはどうだったのでしょうか?
ディマシュのポータルサイト「Dimash News」には、今回のリリースに合わせて
ウォルター・アファナシエフ氏とフラヴィアン・コンパニョン氏、そしてフラヴィアンと一緒に曲を作った編曲家・作曲家のドミトロ・ゴードン氏のインタビューが掲載されています。
そもそもの始まりは、フラヴィアンがFacebookでディマシュの歌声聞き、彼の方から「会いたい」と関係者を通じてラブコールを送ったことからスタートしたそうです。
フラヴィアンは「パトリック・セバスチャンのテレビ番組でディマシュと初めて会った」と言っていることから
恐らく、フランスの有名な司会者兼マルチクリエイターのパトリック・セバスチャンの番組「 les années bonheur (幸せな日々)」に出演した時が初めてだったのではと推測されます。
◆ディマシュが番組に出演した映像(パトリック・セバスチャン公式YouTubeチャンネルより)※1
ちなみにディマシュはフランス語の「S.O.S. d’un terrien en détresse」を披露し、「並外れた声!」と大絶賛されたそうです。
その後フラヴィアンはドミニクと共に「ディマシュにしか歌えないサビの曲を作ろう!」とピアノに向かい、その曲のデモが後日ウォルターに渡ったとのこと。
プロデュースを引き受けたウォルターは、時間の経過やディマシュ自身の進化に伴い、楽曲のサウンドやアレンジ、ハーモニー等を大きく変え、ひとまず今回リリースされた曲の基本ができあがったのが経緯のようです。
それについては大元の曲を作ったフラヴィアンも納得で、インタビューによると「曲は年月を経て進化しました。ウォルターはサビに変更を加え、素晴らしいブリッジも作ってくれました。」と語っています。
ともあれ、2017年にディマシュと出会った音楽家達にとっては「コラボレーションする」ことは間違いないことでしたが
その後なかなかファンの我々が望むようなストーリー展開になっていかず、こちらはやきもきしておりました。
そんな例をひとつ。
2020年5月24日、ディマシュ自身の誕生日にYouTubeライブを開催し、視聴者からの質問に本人が答えるという生配信を行っていました。
その中であるDearから
「”Over Here"(当時は仮にこの曲名で呼ばれていました)はどうなるの?」
という質問がありました。
その時のディマシュは「うーん、よく分からないけど、まあまあまあいつか、ね」みたいな感じで、ちょっとはっきりとは言いにくそうでした。
我々には知ることのできない、諸事情があることをうかがわせるような表現ですが
折しもCOVID-19によるパンデミックの影響で、世界中が大混乱している最中。
何かをすぐにやることが難しい世の中でしたよね。
しかしその数ヶ月後、「オーケストラ演奏をフランスで録音する」という情報が流れ
2020年の9月頃、演奏チームのアカウントによるインスタライブでのオーケストラ演奏や、ストーリーズで演奏の一部を聴くことができました。
コロナ禍で活動がままならない時でも、権利関係か何かが複雑だとしても(これはあくまで私個人の推測)
歩みはゆっくりながらでも、私達の目に見えないところで着々とこのプロジェクトは進行していたのだと思います。
ディマシュの表現によると「ボウルにいれて」曲を調理する準備は出来ていたものの、世に放たれるまでにはまだまだ時間が必要だった、そういうことだったのでしょうか。
しかし結果的には、8年間という熟成期間を経て出来た歌は、確かに「ディマシュにしか歌えない」美しくも複雑な曲になりました。
母国語も活動拠点もバラバラであるにも関わらず、8年もの間友情と創作意欲が続いていたことは、私達聴き手にとっても本当にありがたいことでした。
やっぱり職人としては、ディマシュという唯一無二の素材を目の当たりにしたら
「創りたい!」という衝動にかられるものなのでしょうね。
そしてそうさせたのは、やはりディマシュの歌唱力と人柄のおかげなのだと思わずにはいられません。
ディマシュさん、あんたやっぱすげえよ…
そろそろ「のん考察」も終わりにしようか、というところですが
もうちょっとだけ語らせて!
ということで(笑)
ブログの冒頭に「感情の螺旋階段」などどぬかしましたが
この曲のすごいところは、ディマシュの表現力だけではなく、オーケストラ演奏が絶妙ではないかいうことです。
とはいえ【学生時代は部活動は全て音楽部だったけど、素人に毛すらはえていない】私の言うことなので、話半分で聞いてくださいね←予防線の張り方笑
イントロから全編にわたって、ピアノの旋律が印象的ですが
弦楽器の音色がそれにつづき
打楽器、管楽器(特に金管楽器)はしばらく主張することなく静かに音をいれていきます。
続く2番のパートでは
シンバルやティンパニが「ちょっと盛上げさせていただきますわ」とばかりにその姿を現し
サウンドに厚みが増していきます。
そしてラストに向かうブリッジ部分を経て
ついに曲が最高到達点へ達したその時、打楽器も金管楽器も
それまで溜めていたエネルギーを解き放つかのように
一気に音が炸裂していきます。
そして最後は、ディマシュのファルセットを見守るかのように静かにエンディングを迎えます。
ディマシュの歌声に負けない、すばらしい演奏とアレンジで、私はすっかり聴くことをやめられない訳です。
時系列のところでもお話しましたが、オーケストラ演奏の録音は2020年のコロナ禍真っ只中。
「Dimash News」では、マスクをつけている演奏者の皆さんの写真があります。
それだけでも大変だったのではと思いますが
こうして晴れて、世界中にこの音楽が聴かれることとなり
一ファンとしても本当にうれしい限りであり、多くの方にこの曲を聴いてほしいと願わずにはいられません。
最後に
さて、大分ひさしぶりの更新でしたが、ここまでお読みいただいてありがとうございました!
私が推し活を少しお休みしている間に、ディマシュは色々な曲を発表しています。
また機会があれば、皆さんにご紹介したいと思いますが
次回は「Love's Not Over Yet」のMVや歌詞の世界観についてお話できたらいいなと思っています。
ではでは、また。
※文中内において、日本語での読みやすさの観点から一部敬称略とさせていただきました。あらかじめご了承ください。
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