著者: 川上 弘美, 篠田 節子, よしもとばなな 他
タイトル: 恋愛小説

これはウイスキーのボトルにおまけで、一人の作者のウイスキー

にまつわるミニ恋愛小説本がついてくるという魅力的な企画

を一冊にまとめた本です。

発売当初、近所のローソンで探していたばばさんの本がついている

ウイスキーを見つけたときには、買おうか・・・としばらく

悩みましたが、しばらくしたら絶対に何らかのかたちで

読むことができるだろうと判断してやめました(笑)

念願かなって本になった!

装丁もきれい、各話の途中にもきれいな色のイラストのページ

が挿し込まれていて、とても素敵な本です。

収められている作者には、小池真理子さんや篠田節子さん

のような大御所(?)から、川上弘美さんやよしもとばななさん

という私の贔屓の作家さんまで。

結構バラエティーに富んでいますよね。

贔屓目に見たわけじゃないにしても、やはり一番はよしもとばななさん

の「アーティチョーク」がよかったですね。

私も比類の酒好き、好きなお酒はビールとウイスキーなだけに

この短編集の話はどれもツボではありますが(笑)

この「アーティチョーク」は自分の酒好きの由縁というか

根っこを思い出させてくれる、懐かしい気持ちになるところのある

お話でした。

私も父が毎晩、晩酌で飲んでいたウイスキーのロック。

その飲み終わったグラスに残ったウイスキー味の氷を

もらうのが小さいころの楽しみでありました。

ほんとにうすーーいウイスキーの味がしみこんだ氷は

今舐めてもおいしい(笑)

なので、いまだに父が一番好きなスコッチ、日本製のウイスキーに

は目がないのですが、香りが苦手でバーボンは飲めません。

お酒の好みも父そっくりです。

主人公は、お酒の大好きだった祖父の教えに従って

自分自身に対してまじめに生きている。

祖父に宝物のようにかわいがってもらえた、優しくしてもらったこと

を思い出す。「天地がひっくり返っても、おじいちゃんは私のことを

かわいいと思ってくれていた。」そう思うことで私は大丈夫だと思うのだ。

主人公と祖父母、そしてウイスキーの思い出話とともに、彼女の

恋愛が描かれる。

もうお互いが離れていく時期なのかもしれない。。と彼女は

つらいけど別れを決断する。

傷がいえる時間を穏やかにすごしていくのかな。という私の思惑は

はずれて、少し時間をおくことで相手の素晴らしさ、自分と

こんなに合う人はいないということを実感し、今までより大きな心で

二人のあらたな道を見つけ出していく。

角度を変えて人生をみる相手をみる、自分を見ること。

そうすることによって相手の大切さが見えてくる、これから先の

たくさん可能性がひろがっていく。

最後の一説がよい

「今の私にとって、目の前のグラスの中の氷は長いときをこえてきた

水晶に、そしてウィスキーはこのひとときを閉じ込める美しい琥珀に

思えた」

ウィスキーを飲みたいと思った。