店を出て
人通りが多い場所まで
チャリを押しながら
彼女を送った
気まずい数分だった
別れの挨拶をする頃になって
彼女の名前を知らないことに
気づいた
あわてて自分の名を名乗ってから
彼女の名を聞いた
「ゆりです」
まだ化粧なれしてない彼女が
選んだリップの色
薄いピンクのような…
ベージュのような…
控えめな口元から
控えめな声を返す
彼女
それは紛れもない優しさに
満ちていた