「君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話」

 佐藤優


📝佐藤優さんに、灘高生がインタビューする形式の本。
外交に関する話題が主ですが、高校で習う歴史の知識とつながるまで掘り下げ、わかりやすく解説してあります。他にも大学の現状や、卒業後の進路(この生徒達は官僚志望かな?)についてのアドバイスもありました。

息子は灘高校にもエリートにも縁はなさそうですが💧、核とかWW2とかロシア関連とか、オタ目線で興味津々な内容だったようで、所々かいつまんで読んでました。
佐藤さんが生徒に潜水艦について質問したところでは、当然即答💮
挙句、「○ちゃん灘高生に勝った!✌️」
…いや、そこだけ勝ってもですね?
(とりあえず毎回の組分けテスト、安心して見ていられるようにしてくださいよ…チーン)

全体を通して、反知性主義に陥ってはいけない、というのが生徒達へのメッセージでした。
反知性主義というのは、知性的なものを信用しないことだそうです。ここでいう知性は「総合知=知識を繋げていく姿勢」です。ですからどんなに専門知識を詰め込んでいても、盲信的になったり、利害ばかり考えたり、思考停止しているのは、反知性なのです。偏見なく理性的に物事を見るためには広く教養を身につけましょう、ということでした。


📝この本は2013年〜2015年に行われた対談ということで、クリミア併合の話題が取り上げられていました。タイムリーなので紹介します。

19世紀、ウクライナ東部、南部はロシア帝国支配下に置かれ、ウクライナ語が禁止されロシア語に統一された。また1917年のロシア革命後も、この地域はソビエトの支配下となった。
一方西部はオーストリア=ハンガリー帝国の支配地で、多言語が尊重されたので、ウクライナ語が生き残った。

第二次大戦中に、ウクライナ民族主義者のステファン・バンデラが、独立運動を起こした。当時西ウクライナにはユダヤ人が多かったので、ユダヤ人排斥を行なっていたナチスはこの独立運動を支援し、ウクライナ人以外の虐殺に加担し、ソ連軍も追い出した。
しかし今度はナチスが手のひら返しをし、ウクライナ人を奴隷化した。バンデラは抵抗したが、ナチスに逮捕された。

1945年、ドイツが敗れ再びソ連軍が西ウクライナに入ってきて、ウクライナ全土が「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」となった。
ドイツの収容所に入れられていたバンデラはアメリカ軍によって解放され、西ウクライナでの反ソゲリラ運動を支援したが、ソビエトのKGBに暗殺された。
(ソ連支配に耐えかねた西ウクライナの住民の一部は、カナダに亡命した。1980年代になりペレストロイカ政策でソ連人と外国人の接触が緩和されるようになると、彼らはウクライナ独立のために本国へ資金援助を始める。)
そして1991年、ソ連崩壊に伴って、ウクライナ全土が独立した。

(2012年)、西ウクライナよりの反ロシア・親欧米政権がロシア語を公用語から外して、ウクライナ語だけを公用語とした。その結果、東部、南部のロシア語しか話せない人達(公務員)は仕事をクビになった。それでデモが起こり、2014年、ロシアがウクライナの安定化を口実にクリミア侵攻した。

🗓5/4 読了