第六回野村道場 総括 | 柔道家・野村忠宏のブログ 『Nomura Style』

第六回野村道場 総括




DaiwaHouse presents「第六回 野村道場」が8月10日(水)、2019年の第一回以来、実に3年ぶりに約180人の小学生、中学生、観客席で親御さんや柔道ファンの皆さんが見守るなか、対面形式で行われ、横浜武道館には子どもたちの笑顔があふれました。

笑顔があふれていたのは、子どもたちだけではありません。特別講師の谷本歩実さん(アテネ、北京五輪女子63kg級 金メダリスト)スペシャルゲストの大野将平選手(旭化成所属、リオデジャネイロ、東京五輪男子73kg級 金メダリスト)、私の現役時代のライバルでもあったルートウィヒ・パイシャーさん(オーストリア)、高校時代に柔道部で今回協力をして下さった人気デュオ「スキマスイッチ」の常田真太郎さん、「柔道YouTuber」のドンマイ川端選手、そして私自身も、子どもたちに少しでもしっかり伝えようと声が自然と大きくなり、気が付くといつの間にか笑っている、そんな感情を喜びとともに噛みしめる1日となりました。

参加者の皆さん、講師やゲストの皆さん、今回から特別協賛を頂く大和ハウス工業株式会社を含めご支援くださった企業の皆さん、本当にありがとうございました。

19年に第一回「野村道場~JUDO IGNITION TOKYO~」を、東京武道館(東京都足立区)で開催した後、20年には東京オリンピックが延期されるなど、スポーツ界は新型コロナウイルスとの未知の闘いを強いられました。

大変困難な状況に置かれましたが、「伝統的価値」と「革新的な伝承」を掲げ、柔道を活性化するために発信をするとした私の目標を諦めてはいけないと考えました。様々な模索を続けながら、20年10月4日、第二回野村道場で、初めてオンラインで全国をつないで柔道教室を開催する新たなチャレンジを始めたのです。

第二回から第五回の4回は、参加して下さった小中学生の柔道へのあくなき向上心や、特別ゲストで快く参加してくれたオリンピックのメダリストの方々の柔道への使命感、手探りのイベントをご支援頂いた企業、スタッフ皆さんのお力によってオンラインで実施し、多くの手応えを得る結果となりました。これらの経験で学んだ、いつか対面形式になった時にはこう活かしたい、こう伝えたいといった思いが、野村道場の強い根として育った時間だったのだと思います。

そうして3年ぶりに迎えられた対面形式での野村道場で、参加者の皆さんからも大変うれしい感想を頂きました。

神奈川県横浜市から参加してくれた中1のともみさん(13歳)は、大野選手のファンで、2人組んでの練習中に憧れの大野選手から直接、指導を受けたそうです。

「引き手の位置を確認して、ひざをしっかり曲げるように、と教えてもらいました。本当にうれしかったです。8月には練習会がありますし、12月には新人戦も控えているので、きょうの体験を大きな励みにしてもっと柔道を頑張りたいと思いました」と、野村道場の魅力でもある、金メダリストからの直接指導を楽しんでくれたようです。

千葉県柏市から参加してくれた小学3年(9歳)のゆうしんくんは、昔、柔道をたしなみ、今は子どもたちを指導しているお父さんと一緒に武道館に来てくれました。オーストリアのパイシャーさんを、小さな体ながら1本背負いで投げたシーンはとても豪快でした。

「一本背負いがうまくできてとってもうれしかったです」と喜び、お父さんも「クラブで教えていますが、技への入り方やていねいな崩しなど、子どもにも私にも、とても有難い講習会になりました」と話されていました。私自身、対面形式で行う講習の意味や価値、その広がりを改めて認識させてもらいました。

これから、柔道に興味のある子どもたちに1人でも多く、もっとカジュアルに経験をしてもらいたい。また、昔やっていたけれど少し離れてしまったという経験者、東京パラリンピックでも注目された視覚障がい者の柔道選手たちも参加できる形など、今後の野村道場を益々バージョンアップして行こうと強く願っています。

困難な時期を皆さんと乗り越えてきた喜びを噛みしめ、第七回に向けて、柔道の新たな魅力をまた発信するために準備を始めて行きます。次回、また皆さんにお会いできるのを心から楽しみにしています。

2022年8月 野村忠宏

写真©竹見脩吾