けさ(令和3年2月10日)の朝日新聞「声」欄
<朝日川柳>に、このような川柳が載りました。
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SBG見て勤勉の阿呆らしさ
福島県 佐藤国喜
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これは前日(2月9日、朝刊経済面)に掲載された「ソフトバンクグループ 純利益が3兆円」の記事に対する揶揄なのですが、ほとんどの人は「その通り! もう、あほらしくて、やってらんない」と云った言葉しか頭に浮かばなかったはず。
庶民がその域をめざすことは不可能です。ですから、悲憤の元である己の非才を自嘲的な笑いのなかに押し込めるしかない。「ああ、俺はいったいどうすればいいのか」。じっと掌を見つめても、時すでに遅し――。そして、あの時代に歌われた「昭和ブルース」を思い出すのです。
「うまれた時が悪いのか それとも俺が悪いのか
何もしないで生きてゆくなら それはたやすいことだけど……」
では、その記事を引用させていただくと――
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ソフトバンクG、純利益が3兆円
日本企業過去最高 4~12月期
ソフトバンクグループ(SBG)が8日発表した2020年4~12月期決算は、純利益が前年同期と比べ6倍超の3兆551億円だった。SMBC日興証券によると、通期決算を含め日本企業で過去最高。傘下の投資ファンドの投資先企業の価値が上がり、巨額の含み益をもたらした。ただ、保有株の中身を見ていくと、今後も順調に推移するかは中国の「政治リスク」がカギを握りそうだ。
グループ企業では携帯電話大手のソフトバンクが堅調で、売上高は同前年同期比6.1%増の4兆1380億円だった。
SBGの業績をめぐっては、昨年は米シェアオフィス大手「ウィーワーク」の経営悪化に伴う巨額の損失が響き、投資事業が足を引っ張った。今期は一転、世界的な株高を追い風に急回復した格好だ。
傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」では今期、米料理宅配大手「ドアダッシュ」をはじめ、8社が上場。投資先の米配車大手「ウーバー・テクノロジーズ」も株価が好調で、1.5兆円の含み益が出た。投資先の未上場企業の価値も上がり、孫正義会長兼社長は8日の記者会見で「やっと収穫期に入り始めた」と話した。SBGの株価は8日の終値で9485円と、2000年のITバブル以来の高値を付けた。
ただ、成長軌道に戻したように見えるが、死角もある。孫氏は利益より保有株式の価値の合計を重視しているが、5割以上を占める中国IT大手アリババが中国の政治リスクにさらされている。傘下の金融会社アント・グループの上場延期や中国政府からの規制強化方針のあおりで株価は昨年10月末から1割超も下落。中長期的な成長に疑問符がつく状況だ。中国の政策変更がSBGの経営に影響しかねないと言える。
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また、「ITmediaNEWS」2月8日の記事には
こうありました。
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SBG決算、利益が前年比6.4倍に ファンドが好調
孫社長は「この程度で収まるつもりはさらさらない」
ソフトバンクグループ(SBG)が2月8日に発表した2021年3月期第3四半期累計(20年4~12月)の連結業績は、売上高が4兆1380億円(前年同期比6.1%増)、純利益が3兆551億円(前年同期比6.4倍)の大幅増益だった。孫正義会長兼社長は「この程度で収まるつもりはさらさらない」と意欲を見せた。
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たっぷり儲けることを、どうこう言うつもりはありません。しかし、みなさんもご承知のように、昨年「ソフトバンクグループは2兆円を稼いで法人税はたった500万円しか払っていない」というニュースが流れたのです。「法にもとづいている。違法ではない」ということなのですが、世の人はそれを正方だとは決して思っていないはず。悲しいかな、現在も同様の思惑で事態は進んでいるのでしょう。
われわれがこのネット社会を渡って行くには、今や好むと好まざるとにかかわらず、大家である[ソフトバンク(ヤフー)]や[NTT(ドコモ)][KDDI(au)][楽天(Rakuten)]などに寄りかからないと生きていけないのです。われわれ店子の“生殺与奪”は、大家にがっちり握られているのです。
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そして、同じ朝日新聞の8日付朝刊オピニオン面[記者解説]では
経済部の寺西和男記者がコロナ下の「株高」について書いていました。
(記事の「要点」と「後半部分」を引用します)
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続く株高、膨らむ債務
緩和マネー流入、富の偏在が顕著に
/金融緩和によるマネーが、株価やビットコインなどの資産価格を
上昇させる要因に
/世界の債務残高が過去最高になり、市場動向次第では新興国など
で債務危機の懸念も
/大幅な株高は富裕層の資産を膨らませ、富の偏在の是正がポスト
コロナ経済の課題に
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株高が格差の拡大を生んでいる点にも目を向ける必要がある。国際NGOのオックスファムは1月、昨年3月から12月末の間に、世界の超富裕層上位10人の資産が5400億ドル(約56兆円)増えたとの試算を発表。その分だけで世界の全人口分のワクチンを買うのに十分な額だと指摘している。
野村総合研究所の推計によると、日本国内では19年の純金融資産額(保有金融資産から負債を引いた金額)が1億円以上の富裕層は約133万世帯。アベノミクスが始まった13年から一貫して増加傾向で、今の株高で恩恵を受ける富裕層も多いとみられる。
世界では昨年、1億1400万人の雇用が失われたとの試算もある。日本では昨年12月時点で正規雇用が1年前より16万人増える一方、非正規雇用は86万人減り、弱い立場の人にしわ寄せが来ている。経済の立て直しには格差是正の観点が不可欠で、政府、企業の取り組みが求められている。
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「他人がいくら儲けようと私には関係ない」「墓場にカネは持っていけない」……と、強がりを言っている場合ではありません。「金融」の恐ろしさは、私たちの労働で得られる<カネの価値>と、人間の血が通わぬ株などで得られる<カネの価値>とが同じである、というところに問題があるのです。富の偏在は「健康な社会」の崩壊につながるでしょう。改革が必要です。
あの世の宇沢弘文先生、なんとかなりませんか。庶民は「本能寺の変」を起こせませんか。麒麟の姿はまだ見えません。
(記 2021.2.10 令和3)