砂・砂・砂… 探査機「はやぶさ2」のホットニュース
日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって2014年に
打ち上げられた探査機「はやぶさ2」のことを記録しておきたい
と思います。
宇宙を航行し続けた「はやぶさ2」は、2018年に小惑星「リュウグウ」に到着したあと1年以上にわたって「リュウグウ」を調査し、2度の着陸で岩石を採取しました。その後、昨年11月にそこを離れ、1年以上かけて地球に戻ってきたのです。そして、採取した岩石などを載せたカプセルをオーストラリア南部のウーメラ砂漠にパラシュートで着地させ、回収されました。2020年12月、コロナ禍にあえぐ世界のなかで唯一のホットニュースとなりました。
大活躍の「はやぶさ2」は、カプセルを地球に落とすと、休む間もなく次の小惑星へ向かった、とか。まるで生き物のようですね。深海魚「リュウグウノツカイ」の宇宙版のようです。感動!
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以下、朝日新聞(2020年12月16日付朝刊)から引用します。
♦1面<小惑星「リュウグウ」の砂>
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開けてびっくり、「砂」どっさり
はやぶさ2カプセル
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は15日、小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルを本格的に開封し、小惑星「リュウグウ」へ1回目に着陸した際に採取した砂が収納されているエリアに、小さじ1杯ほどの黒い砂があるのを確認した。数グラムはあるとみられ、目標としていた0.1グラムを超えるのは確実。担当者は「どっさりと期待を超える量が入っていて、言葉を失うほどだった」と話した。
最大で数ミリの砂もあるといい、地球外物質研究グループの臼井寛裕グループ長は「初代と違ってつまめる大きさの粒子があり、溶液に溶かしたり、有機物を抽出したりといった分析ができそうだ」と語った。内部にあったガスも小惑星由来と判明した。
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♦27面<村山斉の時空自在>
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はやぶさ2、浪花節ではなくとも
おかえり、はやぶさ2
はやぶさ2が小惑星リュウグウから戻り、カプセルを地球に落とし、次の小惑星へ向かった。世界的な快挙だ。
太陽系には八つの惑星の他に、冥王星を含む準惑星や、多くの小惑星がある。太陽が生まれるときに周りを回っていたチリが何度も衝突を繰り返し、くっついて大きくなったものだ。惑星は十分に大きいため、地殻変動など色々な変化を経て、生まれた時の様子は残っていない。
一方、小惑星は小さいため自分自身の活動があまりなく、太陽系が誕生した当時の姿をとどめている可能性が高い。とはいえ表面は宇宙の過酷な環境にさらされてきた。そこではやぶさ2は弾丸を打ち込んで、内部の砂の採取に挑んだ。
先代のはやぶさはトラブル続きだった。小惑星イトカワに到着したが、砂の採取は予定通りにいかず、わずかなサンプルを採った。その後、音信不通になったり、エンジンにトラブルがあったりと、満身創痍で地球へ戻った。そのためかえって国民の関心が盛り上がり、多くの映画やドラマにもなった。浪花節文化だろうか。
持ち帰ったごくわずかの砂も、加速器を使った「スプリング8」などの放射光施設で解析し、数々の成果に結びついた。小惑星からのサンプルリターンは世界初の成果で、その後の欧米の多くの計画に結びついた。いまは米国のオシリス・レックスが小惑星ベンヌに到着し、サンプルを採取して帰還を目指しているところだ。
はやぶさの経験を踏まえ注意深く計画されたはやぶさ2は、技術的にとてもうまくいった。そのためかえって盛り上がりには欠けたかもしれない。だがイトカワと違い、リュウグウは炭素の多い小惑星で、もしかすると生命の起源の情報もある。持ち帰った砂の研究成果が楽しみだ。(素粒子物理学者)
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「リュウグウノツカイ」もそうですが、このようなニュースに接すると、
私は手塚治虫の「火の鳥」を連想してしまいます。世界の果ては――
(記 2020.12.16 令和2)