*随想(81) 映画『罪の声』が封切り 衝撃の映像に涙、涙…  | のむらりんどうのブログ       ~君知るや ふたつの意識~

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2002年9月22日の早朝。目覚めて布団の上に起きあがった瞬間、私は「光の玉(球)」に包まれたのです。以来、「自我」(肉体と時間に限定されたこの世に存在する私)と、「真我」(肉体を超えて永遠に宇宙に実在する私)の、ふたつの意識を持って生きています。

 

 

       あれから35年… 嗚咽とともに涙が止まらない

 

    映画『罪の声』がきのう(20201030日)封切られ、日比谷の

    映画館へ出かけました。

 

 警察庁広域重要指定114号事件、いわゆる「グリコ・森永事件(かい人21面相事件)という一連の企業脅迫事件を、塩田武士さんが『罪の声』として発表した作品の映画化です。(未解決。標的=江崎グリコ、森永製菓、丸大食品、ハウス食品、不二家、駿河屋

 

小栗旬さん(新聞記者役)、星野源さん(当時の子ども役)の落ち着いた演技が光っていました。それに、他の出演者の迫真の演技も胸に迫り来るものが。

 

なかでも、星野源さんが「どうして自分の子どもを事件に巻き込んだのか」と母親に訴えかける場面では、もう、泣けて泣けて……。コロナ下の現在、いつもマスクをしていますが、嗚咽が周囲に漏れるのでマスクの上から手で口を押さえていました。

 

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 結局、犯人は逮捕されずに時効を迎えたのです。あれだけ遺留品があるにもかかわらず。

 作家の塩田さんは当時、録音された「子どもの声」を聴いて鳥肌が立ったと言います。巷に流れたその声――。そこに焦点をあてた塩田さんは、それを次のように書きました。

 

                 朝日新聞の紙面広告(1030日付)から引用します。

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   未解決事件の真相  『罪の声』本日公開

 

            35年の時を経て蘇る哀しき宿命――

 

      日本中を震撼させた劇場型犯罪

              謎の犯人グループと真犯人に迫る

 

        原作 塩田武士『罪の声』(講談社文庫)

 

 「平成」が幕を引き、新しい時代を迎えると、歴史に刻まれる「昭和」の皺が、また一つ深まる。

 『罪の声』はフィクションであるが、モデルにした警察庁広域重要指定114号は、昭和史最大の未解決事件である。犯人グループは、関西弁のユニークな挑戦状をマスコミに送りつけ、街のあちこちに指示書を貼って身代金を運ばせるという、史上初の劇場型犯罪を起こした。

 21歳のとき、私は事件に子どもの声が利用されていることを知った。犯人グループは身代金受け渡しの指示書代わりに、子どもの声が入った録音テープを流したのだ。一説には3人の子どもが関わっているとされるが、私は最年少の未就学児と同世代で、しかも同じ関西に育った可能性が極めて高い。どこかですれ違っているかもしれない……そう思った瞬間、全身に鳥肌が立ち、どうしてもこの子どもたちの物語を書きたくなった。それから『罪の声』を完成させるまで、15年の歳月を要した。

 映像化は容易ではない、と考える自分がいるのは事実だ。しかし、阿久津英士役に小栗旬さん、曽根俊也役に星野源さんと伺ったとき、自分のイメージを超える配役だと膝を打った。その後、キャストとスタッフを聞くにつれ、考えうる限り最高のプロが集まったと興奮した。映画化の依頼を受けてから、プロデューサー陣の本気を感じる機会が幾度もあった。その表れの一つが硬軟自在に物語を紡ぎ出す野木亜紀子さんによる脚本だ。

 この映画は総力戦になる、という予感がある。また、そうでなければ戦後最大の未解決事件に立ち向かえはしない。新しい時代を迎える日本で、映画が持つ大きな力を信じて……

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    ところで、私が「グリコ・森永事件」に遭遇したのは

     ちょうど今回の主役、小栗さんと星野さんくらいの年齢でした。

 

 事件の最終は、私の生活の場である京都市南部を中心に展開しました。テープから流れた「名神高速道路の南インターチェンジを降りたところにある国道1号線のそばの城南宮近くのベンチの下」というのは、私の家から1キロも離れていなかったのです。

 

 当時、私は自宅に住んでおり、京阪電車で大阪の新聞社に通っていました。犯人から新聞社などに送られた「挑戦状」には警察に関係することが数多く書かれており、目を見張ったものです。グリコの社長が誘拐・監禁された場所も京阪や阪急電車の沿線にありました。

 

 

  星野さんが演じたテーラーについては、事件と関係のある者が特殊な服を着ていたことが分かり、警察はその服がどこで作られたものか探っていました。言わずもがなですが、じつは私を育てた義兄はテーラーで、警察官二人が我が家を訪れ「特徴のある縫製」について義兄に教えを請いました。「誰が作ったか分かりますか?」――その時たまたま家にいた私は、そばで一部始終を聞いていたのです。私が新聞社に勤めていることを警察官は知らなかったと思います。

 

 映画に出てくる新聞社内のようすはまさにその通りで、振り返れば社会部は火事場のようでした。一方で、店頭に青酸入りの菓子を置いた男が店の防犯カメラにとらえられ、それが連日テレビに流れました。そして、その風貌がある記者に似ているというので本人が警察から質問を受けた、というようなことも耳にしました。

 

 事件は京阪神を中心に動いていましたから、私の周辺でも影響を受けた人が少なからずいたのです。

 

 映画のなかで私がいちばん目を見張ったのは、犯人グループのアジトです。大勢がたむろしている部屋で、大きな通信機器を操る男がいました。通信技術・技能は相当レベルが高い。それと、事件の最終現場となった滋賀県の道路で県警が取り逃がした車両の中で通信機器を操っていた男――この男は同一人物で、アマチュアを超えた特殊無線技士であったと推理するのです。どんな男なのか、いちばん興味があります。

 

 最後に。なぜ、警察は犯人を確保できなかったのか――。そんなことはあり得ないと信じたいのですが、「あえて、確保しなかった」という疑問が残る。その糸の先に、江崎グリコ社長誘拐犯の出自へとつながっていくのです。いや、これはあくまでも私の推理、フィクションですが……。人間とは哀しいものではありませんか。

 

 

                                     (記 2020.10.31 令和2