あれから2カ月がたちました。
昨年暮れ(2017年12月6日)、最高裁大法廷
(裁判長・寺田逸郎長官)で「NHK受信
料の支払いは国民の義務であり、テレビ
設置時からの受信料を支払う必要がある。
放送法の規定は合憲」という判決が出た
のです。
これについて、「とても納得できない」という国民の声が湧き上がると私は思いましたが、あにはからず、逆に「受信料の支払い率が上がっている」そうな。いやはや、われわれ日本人の“根性”には、もう笑うしかありませんね。
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そこで再度、「NHK受信料制度」について考えます。
まず、朝日新聞朝刊1面(2017年12月7日)には、次のように書かれています。
(一部を引用します)
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裁判官15人のうち14人の多数意見。約1千万件とされる未契約の世帯や事業者に影響を与えそうだ。
最高裁で争われたのは、2006年3月に自宅にテレビを設置した男性のケース。11年9月にNHKから受信契約を申し込まれたが、「放送が偏っている」などの理由で拒否。同年11月にNHKが提訴した。男性は契約の自由を保障した憲法に違反すると訴えた。
この日の判決は、受信料制度は、憲法が定める表現の自由を保障するためにあると指摘。受信料でNHKの財政基盤を支える仕組みによって、放送内容に「特定の個人や国家機関から財政面での支配や影響が及ばない」ようにしているとし、放送法はテレビがある世帯などに「受信契約を強制している」と述べた。
また、判決は、近年放送をめぐる環境が変化していることにも言及したが、受信契約を強制する放送法の規定は今も「合理性がある」と位置づけた。……
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裁判官の“苦しい弁明”が見てとれます。
「男性は契約の自由を保障した憲法に違反すると訴えた。」とあります。にもかかわらず裁判官は、国家機関でもないNHKを(当然の存在として)許可するために、「受信料制度は、憲法が定める表現の自由を保障するためにあると指摘。受信料でNHKの財政基盤を支える仕組みによって、放送内容に『特定の個人や国家機関から財政面での支配や影響が及ばない』ようにしている」と判決したのです。
憲法と法令の関係を見るとき、「放送法」は多くの問題をはらんでいます。放送法32条1項では「受信設備を設置した者は、協会(NHK)とその放送の受信についての契約をしなければならない」となっているのですが、これまで「受信契約の強制は憲法違反」という主張が学者や弁護士らからもなされてきたのです。これは憲法19条の「内心の自由として保証された個人の基本的自由権」を奪うということになります。さらに、その中に法令でもない「規約」をつくり、国民に受信料の支払い義務を課すというのは明白な憲法違反です。
さらに、同じく一面の<解説>にはこうあります。(引用します)
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問われる 政治との距離(解説)
長く争われてきた放送法の規定の解釈について、最高裁は合憲と結論づけ、受信料支払いの義務を原則的に認めた。NHKにお墨付きを与えた格好だ。
ただ、最高裁は、NHKに対し、一方的に支払いを迫るだけでなく、目的や業務内容を説明して理解を求め、合意を得られるよう努力をすることが望ましいとした。また、受信料制度は、NHKが政府や特定の団体や個人から独立し、国民の知る権利を満たすためのものだ、とも釘をさした。
逆に言えば、受信料を支払う人たちは、NHKに「知る権利」に応えるよう求める権利がある。NHKは、政治との距離や中立性など、公共放送としてのあり方を問う声につねに向き合い、支払い義務を課された視聴者のための番組作りをする責任がある。
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もっともな意見だとは思いますが、“確信的不払い”を続ける人たちは「NHKの存在根拠」自体を問題にしているわけで、『支払い義務を課された視聴者のための番組作りをする責任がある。』といっても、そもそも「放送法に守備されたNHKの存在」から派生する「支払い義務」の不当性を問題にしているわけです。そこをあいまいにしたまま放置している政府や国会の態度こそが問題なのです。
最高裁は今回、「NHK受信料問題」でよく憲法判断をしたものだと思います。
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「NHK」と「自衛隊」については憲法判断しない(出来ない)、と私はみていたのですが、最高裁は「NHK受信料は合憲」という判断を示しました。
振り返ってみれば、テレビに民放が誕生した時点で、政府・国会は「NHKと憲法」について議論をし、判断しておくべきでした。民放がなくNHKに頼らざるを得なかった時代を経て、現在のように民放があればニュースもわかるし、世間の動きも大方わかる。格差社会が進み、高齢者や生活困窮者は読みたい新聞の購読さえやめる時代です。自身のふところ具合を考えると、見なくても済むNHKに受信料を払っている場合ではない。こう思うのが今日の国民の平均的な声でしょう。
さて、この先どうなるか――
(記 2018.2.10 平成30)