Δ短歌 鑑賞Δ   李 正子 | のむらりんどうのブログ       ~君知るや ふたつの意識~

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2002年9月22日の早朝。目覚めて布団の上に起きあがった瞬間、私は「光の玉(球)」に包まれたのです。以来、「自我」(肉体と時間に限定されたこの世に存在する私)と、「真我」(肉体を超えて永遠に宇宙に実在する私)の、ふたつの意識を持って生きています。


 

       言葉忘れし民には滅びのみありき

     滅びたくなしハングル習う

 

                 李 正子

 

 人間も種のひとつとすれば、世にうまれ世を去りゆく営みに何の不思議もない。しかし、幸か不幸か、人は自己の存在を意識するまでに進化してしまった。

 

   はじめてのチョゴリ姿に未だ見ぬ祖国知りたき唄くちずさむ

 

 在日朝鮮人としてうまれ、差別に苦しんだ作者は、民族と歴史のはざまにあえぐ。

 

 「アリラン」であろうか。みずからの存在を意識した作者の苦悩と誇り。祖国の言葉を知れば、思いは一層ふかくなる。

 

   母の掌にわが掌かさねるたまゆらを日本の土が匂う哀しみ

 

  ゆたかな知性を得て、戦争や偏見を克服することは人間の歴史的課題である。しかし、現実の世界を見れば楽観できない。そのひとつに、政治や文化といった次元とは異質の、あまりにも速く進化しすぎた脳のしくみにあることに気づく。(作者は歌誌「未来」の人)

 

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(歌誌「ハハキギ」4月号所収 平成5年 1993