Δ短歌 実作  歌誌「ハハキギ」作品 ―18― | のむらりんどうのブログ       ~君知るや ふたつの意識~

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2002年9月22日の早朝。目覚めて布団の上に起きあがった瞬間、私は「光の玉(球)」に包まれたのです。以来、「自我」(肉体と時間に限定されたこの世に存在する私)と、「真我」(肉体を超えて永遠に宇宙に実在する私)の、ふたつの意識を持って生きています。

 

 

 

   歌誌「ハハキギ」作品 ―18― (平成3年前期 1991

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[1月号]

 

 姿なき級友の一人はすでに亡く会の始めに黙祷ささぐ

 

 事情ありて集ひ来ぬ者もいくたりか乾杯の辞にそれを織り込む

 

 あのころは目立たぬ男子にありし級友いま溌剌と会を進める

 

 名字捨て愛称呼び合ふこの部屋にあるものすべて中学となる

 

 贈られし青磁の花瓶その場にて披露する師のその手あやふし

 

 たをやかな振る舞ひはきつと幸せなる妻また母親にてあらむか

 

 誰一人帰ることなく二次会へ向かふタクシーの中の早口 

 

[2月号]

 

 一人旅続くるといふ媼来て我らの席にてしばし語らふ

 

 瀬戸内の静かなる地に生活を持つとか言ひて媼は行けり

 

 はるか遠く山の斜面に陽だまりを落として比叡の秋の夕暮れ

 

 ロープウエーケーブルカーを乗り継ぎて没日も近き八瀬に着きたり

 

 せせらぎに合はせゆくごと落ち葉ひとつ流れを変へて川面を下る 


[3月号]

 

 元旦の習ひのひとつ駅売りの新聞各紙すべて購ふ

 

 地下鉄の客ともなりて正月を北野天神へ家族と向かふ

 

 地下鉄の駅を上がれば背後より北山おろしの冷たき風吹く

 

 暖かき正月はここ二三年天満宮に梅ほころびて

 

 運よくもあはく射し来し日光にこがね増すごと金閣の映ゆ

 

 いにしへの贅を見せるもまた良きか子ら金閣を見て感嘆す

 

 耀ける金閣の美はいかならむ印象与ふるか子らの心に 

 

[4月号]

 

 開戦を告ぐる共同電のアナウンス編集局に響き渡りぬ

 

 部長宅に至急電話を掛けてゐる我が声低く意外に冷静

 

 号外の原稿待つもまだ着かず人の揃はぬ時間にあれば

 

 資源なき我が国と緯度ほぼ同じ中東諸国は石油を蔵す

 

 鈴なりのデスク席の一人我は身に危険なく開戦原稿を受く

 

 戦争とは草臥れるもの戦場の兵士然して新聞社の我

 

 国境あるがゆゑに戦争連邦なるがゆゑの強権さてと考ふ