もう、お話をお忘れの方は、左の真ん中くらいにある

「裁判傍聴記 わいせつ略取未遂」 を読み直してください。


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は法廷に連れて来られた。

手錠、腰に縄を巻かれて。

周囲にお辞儀をしながら。


初めにも書いたとおり、は、非常に勤勉で真面目そうなサラリーマン。

でも、今は被告人

被告人は席に着く。


そして、裁判長によって裁判の始まりを告げられる。

被告人は裁判長に促され真ん中の発言台の前に立たされる。

裁判長から「あなたには黙秘権があります。この裁判の中で、言いたくないことが・・・」

と決まった文句を一通り聞かされる。

そして冒頭陳述。検察官から証拠によって証明する事実の朗読を立ったまま聞かされる。

終わると・・・。

裁判長から「さて、いま検察官から読み上げられた事実に間違いがありますか?」

と聞かれる。


被告人は 「間違いありません」 とはっきりと答える。


さぁ、裁きの始まりだ。

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今までは、そう、犯行は、もちろん被告人の独壇場だったわけだ。

いわばホーム。そして選手兼監督。

不謹慎だがそういうことだ。

自分で指示を出し、実行し、奇跡、悪戯があり、決定的なチャンスを手に入れた。

そして我慢汁ダラダラのアドレナリンがっつりの時、あと一歩の時

いや、あと ひと擦り の時、掴んだと思ったそのものが

こぼれてしまった。

こぼしてしまった。


しかし、今は違う。

法廷は完全にアウェー。

そこにいるのは、我慢汁ダラダラのまま拘束された被告人と、被害者・家族。

裁判関係者に傍聴者。


被告人および弁護士は刑を軽くするために戦う。

人権の為と聞いたことがあるが、ま、実際多くは量刑を争うものだ。

そして被害者は恨みを晴らすために戦う。

かの、母子事件の時、「裁判で被害者が恨みを晴らして何が悪い」のような発言が

あったとボクは記憶しているのだが、全くその通りで

被害者側としては被告人に対し、同情の余地がない場合

いかに被告人の量刑を重いものにできるか、その一心で裁判の望むものであるものと思慮する。
実際、今回もそのような主張が父親からされた。


まずは、被告人の主張から、かいつまんで書いていこう。

実際の裁判の流れも 被告人主張 ⇒ 被害者父悲痛な叫び であった。


まず、被告人が声を大にして言いたかったことは・・・。

現実との区別が付かなかった。ということ。

そんなことあるかい。とおもうだろうが、その方向に持っていくしか被告人の逃げ道はない。

活路は、そこにしか、ないのである。

現実と非現実が入れ混じっていた。そう被告人は訴える。


今一度、説明しよう。

被告人が風俗を覚えたのは運送業の役員になってからだ。

ここで協調するのは仕方なく。そう、シカタナク。風俗に通った。

なぜなら同僚達とコミュニケーションを取るため。

そして時が進むにつれ、イメクラとかピンサロとかそんなのに自分から行き

自分からセーラー服のコスプレを頼むようになってしまう。

そんななか、強烈な行為を目撃したため(被害者が痴漢行為を受けていた)動揺し

自分がしているプレイとかを思い出し

現実と非現実の区別がつかなくなってしまい、結果、犯行におよんだ。と、そう被告人は訴える。


しかーし、ここはアウェー。

しかーも、真面目人間が多そうな人種、裁判官相手に

そうは問屋が卸さない。


ボクなら、そっかー、まぁ、強烈ならそうかもね。なんて言っちゃいそうだが。

裁判官がそんなこと言うわけがない。

まず・・・。

「区別が付かなくなる意味がわからない」 と・・・。

あっはぁ~。そっから。意味がわかんないって。容赦ない裁判官。

男ならわかりそうなもんだが・・・。わかんないんだってさ、被告人さん。

でも被告人も説明できないよね。言い訳だもの。みつを。

はい、まずワンアウト。


さらに相手弁護士からは

「あんたホテル入って強姦したかったんでしょう!!!!」

って言われて

「いや、あの、話だけかもしれませんし、わからないです」と

しどろもどろのフ~ラフラ。


そして次は、被害者父親からの上申書の読み上げだ。

被害者父被告人の前に、もう、今にも、ぶん殴りそうな勢いで進んだ。

皆が息を殺した。

凍りついた空気とはこういうことだろう。

被害者父親は、被告人を睨み、手が出そうなのを必死に我慢するように震えながら、見下ろしている。

なんとか裁判官になだめられ父は発言台に立つ。

父親は裁判官に上申書を読み上げる。

第一声。


「私は空港に勤める運送業に携わる人間です!」


はい。ツーアウト。

父からの一言は完全だった。

その一言で、被告人の今までの言動が、全て言い訳に変わった。

空気は全て被害者側に流れだした。

同じ職種だけど同じ人間ではない。

同じ父親だけど同種ではない。

一緒にするな、これ以上、侮辱するな、そう言っているようだった。

もうあとは、押すだけで良かった。

でも悲痛だった。


被害者はボクと同じ状況になっていた。いや、ボクよりずいぶん酷い。

鬱になった。学校に行けない。

涙を誘う父からの叫び。


「この事件により、全てが変わってしまいました。

私は、今まで女の子だから傷をつけないよう娘を大切に育ててきたのに、今では娘は自分で

リストカットをして自分に傷をつけているのです。今でも事件のことを思い出し不眠が続いています。

胃痛も訴えます。娘の性格も変わり、私や家族にあたってくることも多くあります。

自殺したいとほのめかす事もあります。私と同じ中年男性を見るとパニックになります。

犯人はお父さんのような人だったと言われたのがショックで堪りません。

娘は高校生で一番楽しい時期です。でも修学旅行も行けそうにありません。

娘は全く悪くないのにネットでは一部の人間により顔が公開され、援交からのもつれ、などと

ありもしないことを面白おかしく書かれました。

どうして娘や私達家族が、ここまで苦しまなければならないのでしょう。

親としてもっとも心配なのは、明るい家庭が持てるかということです。

将来、男性付き合い、結婚し明るい家庭を持てるのか、今は想像できません。

裁判長、どうか一日でも長く、この男を刑務所に収容していただきたい。また被告人が出所しても

二度と娘の前に会わないように、この地を去って欲しい。そう願っています。」


声を震わせながら、訴える父親には、誰も、何も、言えなかった。


スリーアウト。


試合は終わった。

被害者の試合はまだまだ続きそうだが・・・。








**************** 判決 ***********************



判決の日、ボクは聞きに行ける事ができた。


静かに開廷し、被告人を発言台の前に立たせる。


静かに裁判官判決文を読み上げる。

















「主文、被告人を懲役2年に処す。」











執行猶予はつかなかった。

それほど重たい犯罪だと言う事だ。


被告人が逮捕される前日辺りに、家族でご飯を食べた。被告人と息子と娘と。

被告人のお姉さん、甥っ子。

育ててきた被告人の父親。

昨日会ったその人は、次の日にはもう普通に会えなくて

その人は大々的にニュースで報道された。

何を思ったのだろうか。


そして被害者。被害者父。その周りの人。

何を思ったのだろうか。


ボクは今でも判決が重いとか軽いとかわからないし、わかろうとも思わない。

わかろうとすること自体がおこがましい。

ボクはただの、いち傍聴者。


ただ、流れ的にも、自分でもやってしまいそうな事件なだけに考える。今でも考える。

背筋がぞっとする。今でもぞっとする。






最後に、これは本当に。

被害者女性の回復を心から願う。