サービス業の人材育成というと技術訓練的なものを想像しがちであるが、結局組織で行う仕事である以上は技術が発揮されるまえの前提として、その組織のルール(思考パターン、行動様式)の両方を理解し、実践してもらうことが必要となる。

その思考パターン、行動様式を新人に身に付けてもらうときに考えなければいけない一つの問題は「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のどちらを重点的に教えていくかということではないだろうか。もちろん実際の研修の中では同時並行で進んでいくのであるが、まずは「やってはいけないこと」から重点的に教えていくべきではないかと考えている。というのも既存の組織がある中で「やるべきこと」を出来ないことは人件費のコストを考えると無駄が発生しているが、もともといなかった人が新加入したという前提から考えると、「情況を更に悪化させる」ことはない。しかし「やってはいけないこと」を新人がやってしまうと、それは「さらなる情況悪化」を引き起こす可能性が多分にある。

人材育成の成否が新人のモチベーションに大きく依存していることは間違いないので「やってはいけないこと」ばかり延々と繰り返す研修というのは成長速度を鈍らせるかもしれないが、現状の中国のような各新人によって家庭環境、学習環境、仕事観などに大きな個人差がある情況では、まずは最低限のレベルをリセットしてあげること自体がその後の研修効率を大きく上げることに繋がるのではないかと思う。

現在の先進国で言われているような「ホスピタリティのあるサービス」を目指すレベルにおいては、上記の考え方は逆説的に聞こえるかもしれない。ただ、それはあくまでも一定以上のレベルの同質の新人(未経験者)が存在することが前提となっているのである。以前の日本でも上京してきて「とりあえず食べるのに困らないだろうから飲食業で働こう」というような時代においては、やはり「やってはいけないこと」が初期教育として重要視されていたのではないだろうか。