どうしても行きたい
その日は二度寝をして寝坊してしまい、何も考えずにその辺にある服を着て飛び出した。
誘いはそんな日に限ってくるのである。
私だけでは敷居が高くて行けない寿司屋に誘われ躊躇した。
行きたいのはやまやまだが、今日はマクドナルドのクオーターパウンダーセットを頼めば必ず貰えるTシャツを着て来てしまっているし、髪もハゲあがった感じだったので帽子を被ってごまかしているし、いつにも増してこ汚い感じである。
しかし、このチャンスを逃しては次にいつ行けるか分からない寿司屋である。
クオーターパウンダーのせいで逃がす訳にはいかぬ。
私はTシャツの事は忘れる事にし、寿司に集中する事にした。
チカも行きたいと言うので、寿司の為に店を早目に切り上げ、「寒い、寒い」と言いながらポケットに手を入れながら歩くと、何故か久々に着た上着のポケットには柿の種がむき出しのままたくさん入っていた。
「なんでだ?」と思ったが、心は完全に寿司に支配されているので、「まあいいや」という気になり、柿の種を棄てる事もなく暖簾をくぐった。
「上着お預かり致します」と言われてしまったので、また柿の種を事を思い出してしまい、「どうか柿の種が何かの間違いで飛び出してきませんように」とお祈りをして預けた。
毎日バカみたいに過ごしているからこんな事になるのである。
もう少ししっかりせねば。