怒るチカ
チカはいつも温厚である。
私がどうでもいい事でかんかんに怒っていたり、悪口を言ったりしていても、「まあまあ」と、可愛い笑顔で宥めてくれる天使である。
以前ピアッツァ時代にヤスがよく、「チカに怒られた、チカ恐い」等と言っているのを耳にしたが、「ダメでしょ」くらいの怒られかたであろうと勝手に思っていた。
どうせヤスもしょうもない事で怒られているのは間違いない。
ヤスが悪いに決まっているし、チカが恐いなんて有り得ないのだ。
先日のノムラ祭りにて、元ピアッツァのコマツが何故か主役級に弾け飛んでいた所、一緒に来ていた嫁が具合が悪いので先に帰るというので、「オマエも一緒に帰れよ」と言ってやると、「いえ、自分はお誕生日なんで」と、訳の分からぬ事を言ってまだまだ居る気まんまんである。
「古巣の皆と飲むのも久々であろうから大目に見るか」と放っておくと、コマツは嫁が帰るとますますエンジン全開になり、ついには色んな物をひっくり返し始めた。
「あのバカ」と思っていると、「コマツっ!!」と怒鳴り声が。
まさかと思うとチカである。
「いい加減にしなさいよっ!」と、真顔で怒られているではないか。
「これがヤスの言っていた恐いチカか・・」と、私は震え上がり、「何か言っとかなきゃ示しつかないかこれ?」と思い、「コマツ、ダメだよあんた」と軽く注意してみたもののチカの怒りは収まらず、近くに居たヤスまで「あんたねえ!」と、何が原因で怒られたか分からぬがとばっちりを食っていた。
ヤスは手馴れたもので黙ってやり過ごしていたが。
次の日、コマツの嫁が一人で「迷惑かけて本当にすいません・・」と、泣きながら謝罪に訪れた。
バカな亭主を持つとこんな謝罪行脚をしなきゃいけないのだ。心から不憫である。
「面白かったから全然いいって、チカは怒ってたけど、ハハハ!」と言うと、コマツの嫁はチカに向かって涙ながらに謝罪していた。
しっかり者のチカが居てくれて、うちの店は安泰である。