11月1日,バンコクから約160キロ南にバスで走り,ペチャブリ県タヤン農協を訪問しました。東都生協とタヤン農協は,安全でおいしいバナナを食べたいという生協組合員の願いから,タヤン農協と協力し,1991年から農薬無散布バナナの国際産直を行っています。

2001年9月には,バナナの産直10周年を記念して,現地で記念式典を行ったそうです。日本からは生協組合員 13 名を含む総計27名が出席し,盛大にお祝いをしました。そのときに参加した人が,今回のツアーに数名おられました。4年ぶりの農協施設はずいぶんと立派になっていて,ある人は,「これは私たちが食べ続けたお陰よ」と,誇らしげに語っていました。

選果場における作業工程は次のとおりです。廃油利用の石鹸を使った出荷前の洗浄,乾燥,高圧空気で虫やゴミを飛ばして,点検,梱包などの工程になっています。
ところで,バナナは青色(未熟)で輸入し,国内の加工室で色付(追熟)作業後,出荷されます。これは,成熟したバナナ(黄色)にはチチュウカイミバエ,クインズランドミバエ及びミカンコミバエが寄生するため,これらの害虫が分布している地域からの成熟バナナの輸入は植物防疫法で禁止されています。

従って,バナナを上記ミバエの発生地域から輸入するときは,成熟バナナが混入しないよう日本までの輸送期間及び収穫時期を充分考慮し,更に輸出前の厳重な選果が必要なのです。万が一,輸入時に成熟バナナが発見されると,除去選別作業に長時間を要すため全体的に品質が低下し,さらに多額な廃棄経費が必要になります。

つまり,日本人が日常食べているバナナは未成熟バナナを追熟したもので,樹上で成熟したバナナではないのです。これを食べるには,現地に赴く必要があります。
早速,タヤンで成熟したホートン・バナナをいっぱい食べました。香りと甘みが良く,日本で食べるバナナとずいぶん食味が違います。

タヤン農協の代表者と短い時間でしたがヒアリングを行いました。組合員数2000人。バナナの品種はホートン7割,モンキー3割。バナナの栽培面積は2500ライ(約400ha)。バナナの販売高は1000万バーツ(約3000万円),その50%を東都生協に出荷し,残りは国内に販売しています。日本の生協に出荷していることがタイ国内で「ブランド」になっており,有名ホテル,タイ国際航空,大手スーパーにも販売しているそうです。
 
東都生協との産直を行い変化した点として,①農薬散布を中止したことで,生産者が健康になったこと,②農業所得が増えたこと,等をあげていました。現在の課題としては,原油の高騰により石油製品が値上がりしていることで,バナナ生産者価格の値上げを要望しています。ガソリンはこの1年間で14B/リットルから27Bに値上がりしたそうです。原油の値上がりは,機械や運輸燃料以外に,包材や灌水用の燃料にも影響を及ぼします。バナナ生産者の再生産を保障する価格形成が必要です。

東都生協が販売するタヤン農協のバナナの消費者価格は,市販の2倍くらいします。組合員にとっては高めのバナナですが,より安全で,生産者の顔や農協職員の顔を思い出しながら食べることが出来るのは幸せです。この国際産直がこれからも長く続くことを祈りたいと思います。