
学びながら呑みログ キンミヤ焼酎の件(前編)
三重の酒蔵、宮崎本店の甲類焼酎。正しくは「亀甲宮焼酎」だが、ラベルに金字で亀甲紋に「宮」と書かれているので「金宮」。「キンミヤ」と呼ばれている。今はオフィシャルも「キンミヤ焼酎」となっている。
関東の大衆酒場で愛されている甲類焼酎だ。三重の近隣の関西ではなく、関東で愛されている。なぜか。
関東大震災時、全国の酒蔵が関東の酒問屋に慌て代金回収に走るなかで、宮崎本店は回収はいっさいせず、本来商品を運ぶ廻船に食料を積んで届けた。元々、宮崎本店の商圏は関東だったので、その美談は取引先の酒問屋から広がったという。その後に、宮崎本店が甲類焼酎(のちの金宮)を作り始める。その旨さもあるが、酒問屋が各酒場に勧めた。
その美談は宮崎本店にも語り継がれて、阪神大震災時も社員みずから動いたという。
「亀甲宮焼酎」は1930年発売。当時の焼酎は、乙類焼酎が主流で、甲類焼酎は売れなかった。宮崎本店も地産のサツマイモで芋焼酎を作っていた。だが、宮崎本店は連続式蒸留機を買い入れて甲類焼酎を作り始める。なぜか。
数年後。戦時統制で、乙類焼酎を作るための原料も統制。乙類焼酎も清酒も作れなくなった。戦後、カストリ焼酎、三倍増醸清酒が酒屋、酒場に並ぶようになる。宮崎本店の予見は当たる。
安い、そして旨い「亀甲宮焼酎」は関東の大衆酒場で愛される酒となる。
関西では「亀甲宮焼酎」より、「宮の雪」という銘の清酒のほうが有名だ。なぜか。