久しぶりの更新だが今回は個人の資産運用について。
最近、何故か知人・友人から「株で損したんだがどうしたらいいか?」という相談をよく受ける。
正直な話、損してから相談に来られても困る。別に私は公開株の運用でメシを食っている訳でもないし、ましてや「一発逆転銘柄」なんて知っている訳がない。(そもそもそんな銘柄はないと思った方がいい。)

ただ、納得のできる投資の手法についてはアドバイスはできる。

以下の4つは絶対に守る事:

1)運用する資金の性格をはっきりさせる事
2)取るリスクの性格を把握する事
3)利益を確定させるまでの「シナリオ」を作る事
4)シナリオから外れたら速やかに手じまう事


それでは順番に説明しよう。

1)運用する資金の性格をはっきりさせる事
運用する資金なので、当座の間使い道のないお金である事は間違いない。しかし、それが「3年後の結婚資金」か「10年後の住宅取得資金」か「30年後の老後資金」かで全然変わってくるし、「1円たりとも損を出す事が許されない」のか「全損になるリスクを負ってでも大きく儲けたい」かでも全然変わってくる。
なので私がこの手の相談を受けるときに聞く第一の質問は「どういう性格の資金の運用ですか?」である。
多くの場合、答えは資金使途はまちまちなのだが「損はしたら絶対に困る。だから何とか損した分は取り戻したい」である。
はっきり言おう。「損をしたら絶対に困る」のならば、全額、定期預金にしなさい。
私が投資の仕事を通じて得た最大の教訓は「投資で絶対に損をしない方法は一つしかない。それは何もしない事。」
儲けを狙う、と言う事はリスクを取る事。リスクを取った以上、損をする覚悟がなければ駄目だし、損をする覚悟がないのならばリスクを取ってはいけない。
また、資金を置いておく期間によっても取れるリスクが変わる事も重要である。期間が長ければ長いほど取れるリスクは取り戻せる期間が長い分、大きくなる。だから同じ「老後資金」でも20代の人と50代の人とでは運用方針が当然違う。
私は「取ってもいいリスクの量」を考える上で目安に考えているのは「半分失っても明日からの生活に重大な支障を来さない」範囲と言っている。もちろん、半分以下になる事も十分にありうるのだが、そこは4)の所で説明しよう。

2)取るリスクの性格を把握する事
この手の相談をしてくる人の全員(ほとんど全員ではない。「全員」である)が「証券会社の人に(あるいは株に詳しい友達)勧められるがままに買った」銘柄である。銘柄を見せてもらった事もあるが、およそ個人投資家が「3年後に家を買おうと思って貯めた」お金を運用するにはふさわしくない投機色の濃い仕手銘柄が大半を占めたりする。
ここで最大の問題は自分がどういうリスクを取っているのか、全くわからずに投資をしている、と言う事なのである。これでは博打を打っているのと同じである。
投資をする上で(それが株であれ、債権であれ、為替であれ)、「なぜ、この投資をすると利益が出ると思っているのか」というのがあるはずである。例えば輸出関連株であれば、「円安に振れる」という事もあるだろうし、好況事業に強い建設会社の株であれば「公共投資が今後も増え続ける」というものがあるだろう。
投資をする、と言う事は「そうならないリスク」を抱えると言う事なのである。
この点は続く3)、4)とつながる重要なポイントである。

3)利益を確定させるまでの「シナリオ」を作る事
基本的に上記2)の裏返しである。「ちゃんと自分が思っていた方向に物事が動いていますか?」と自分に問い続けて市況をウォッチし続ける事である。(これが実に重要)
しかし、私が個人で投資をするときも人にアドバイスをするときも気を付けている事がある。
目標の金額に達したら迷わず手じまう事。
よく聞かれる愚痴は「手じまった後も上がり続けて後悔した」というものだが、私のそれに対する答えは「それがどうした?目標には行ったんでしょ?」である。
誰もが「底値で買い、高値で売り」たがる。だが、それは現実的には無理だ。むしろ、変に欲張って買い時・売り時を逃す方が危険だ。

4)シナリオから外れたら速やかに手じまう事
リスクを取る以上、自分が思い描いていたシナリオ通りになるとは限らない。そこでシナリオから外れた場合の対処だ。答えは単純。
傷口が大きくならないうちに諦めて手じまう事。
これはプロでもなかなか出来ない。大抵の場合、「もう少し様子を見よう」という事でズルズルと行ってしまい、取り返しのつかない段階で人に相談をするのである。

以上、プロの方から見れば「何だ、当たり前の話じゃないか」と思われる事だろう。ただ、実際に実行できている人もあまりに少ないので自分への備忘録を兼ねて書き置いた。