さて、サブプライム問題がここまで大きくなった背景には(1)これらハイ・リスクのローンが証券化され、(2)その証券化された商品が世界中の投資家に販売されていた、事については前回申し上げたとおりである。
次の疑問は、
なぜ、証券化が大きな問題を引き起こすのか
ということだろう。
実はこの証券化、サブプライム・ローンで始まった話ではない。古くはモーゲージ・バックド証券(MBS)と呼ばれる通常に住宅ローンをプールした証券や、カードローンを証券化したもの、ハイ・リスクの企業向けローンを証券化したものもある。また、日本では大企業が自社のバランスシートを整理するために本社ビルを証券化するものも多くなっている。
これら証券化商品に共通する構造がある。それは
1)比較的性格が均一な債権(多くの場合はローン)をプールして
2)そのプールごと元々のローンの出し手は証券化商品を発行するための専門会社(通常、SPCと呼ばれるペーパーカンパニー)に売り、
3)そのSPCは債券を発行してローンのプールを買い取る資金を調達する
というものです。
この仕組みでは元々のローンの出し手(例えばカード・ローンを出している銀行)はローンをSPCに売却した後も債権の回収事務は引き続き行うので手数料が稼げる上、ローンの回収額が当初の想定を上回れば、自社の儲けになる一方、売却したローンのリスクは他人にかぶせることができる、というメリットがあります。
さて、このSPCが発行する債券ですが、もう一ひねりあります。それは多くの場合、「優先・劣後」構造をとっている、と言うことです。
カードローンの証券化商品を例にとって見ましょう。わかりやすくするために実際の統計とは違う数字を使いますが、一人100万円のカードローンで年15%の金利を払っている人が100人いたとします。そうすると、1億円のプールができ、毎年15百万円の金利が入ってきます。このローンのプールをSPCが買い取ります。
元々カードローンを出した銀行が取るローン回収に拘わる手数料などはここでは一旦、無視しましょう。
SPCはこの1億円のローンのプールを1億円で買うとしましょう。これをどうやって調達するかですが、ここから話がややこしくなります。
まず、「プールにお金が残っている限り、最優先でお金を返します。その代わり、金利は1%しか払いません」という約束の債券を5000万円発行します。これをA号債と呼びましょう。A号債に払う金利は毎年50万円ですね。
次に、「A号債の金利を払ったら金利はお支払いします。また、A号債の元本を返し終えたら最優先でお金をお返しします。その代わり、金利はA号債よりも少し高い3%です」という約束のB号債を4000万円発行したとします。B号債に払う金利は毎年120万円ですね。
残りの1000万円は「毎年の金利はA号債・B号債の金利を全額払った後に払います。また、A号債・B号債の元本を払い終えた残りの元本は全てあなたのものです。その代わり、もともとのローンが焦げ付いた損はまずあなたが被ります」という約束の証券で調達します。これを業界ではエクィティと呼んでいます。さて、このエクィティの投資家、いくらの金利収入があるでしょうか?
まず、プール全体で1500万円の金利収入があり、ここからA号債・B号債に支払う金利、合計170万円が差し引かれ、1330万円になります。一方、このプールでは毎年貸し倒れがおきますので、仮に毎年5%の人が貸し倒れると仮定しますと、500万円が貸し倒れて回収できないわけですから、差し引きそれでも830万円の収入がエクィティの投資家に入ることになります。1000万円の投資に対して毎年830万円の収入が入ってくるわけですから、一見、おいしい投資と言えるでしょう。
しかし、上記の計算には大きな前提があります。この前提が崩れると、大変な損失を被ることになるわけです。
続きは次回・・
次の疑問は、
なぜ、証券化が大きな問題を引き起こすのか
ということだろう。
実はこの証券化、サブプライム・ローンで始まった話ではない。古くはモーゲージ・バックド証券(MBS)と呼ばれる通常に住宅ローンをプールした証券や、カードローンを証券化したもの、ハイ・リスクの企業向けローンを証券化したものもある。また、日本では大企業が自社のバランスシートを整理するために本社ビルを証券化するものも多くなっている。
これら証券化商品に共通する構造がある。それは
1)比較的性格が均一な債権(多くの場合はローン)をプールして
2)そのプールごと元々のローンの出し手は証券化商品を発行するための専門会社(通常、SPCと呼ばれるペーパーカンパニー)に売り、
3)そのSPCは債券を発行してローンのプールを買い取る資金を調達する
というものです。
この仕組みでは元々のローンの出し手(例えばカード・ローンを出している銀行)はローンをSPCに売却した後も債権の回収事務は引き続き行うので手数料が稼げる上、ローンの回収額が当初の想定を上回れば、自社の儲けになる一方、売却したローンのリスクは他人にかぶせることができる、というメリットがあります。
さて、このSPCが発行する債券ですが、もう一ひねりあります。それは多くの場合、「優先・劣後」構造をとっている、と言うことです。
カードローンの証券化商品を例にとって見ましょう。わかりやすくするために実際の統計とは違う数字を使いますが、一人100万円のカードローンで年15%の金利を払っている人が100人いたとします。そうすると、1億円のプールができ、毎年15百万円の金利が入ってきます。このローンのプールをSPCが買い取ります。
元々カードローンを出した銀行が取るローン回収に拘わる手数料などはここでは一旦、無視しましょう。
SPCはこの1億円のローンのプールを1億円で買うとしましょう。これをどうやって調達するかですが、ここから話がややこしくなります。
まず、「プールにお金が残っている限り、最優先でお金を返します。その代わり、金利は1%しか払いません」という約束の債券を5000万円発行します。これをA号債と呼びましょう。A号債に払う金利は毎年50万円ですね。
次に、「A号債の金利を払ったら金利はお支払いします。また、A号債の元本を返し終えたら最優先でお金をお返しします。その代わり、金利はA号債よりも少し高い3%です」という約束のB号債を4000万円発行したとします。B号債に払う金利は毎年120万円ですね。
残りの1000万円は「毎年の金利はA号債・B号債の金利を全額払った後に払います。また、A号債・B号債の元本を払い終えた残りの元本は全てあなたのものです。その代わり、もともとのローンが焦げ付いた損はまずあなたが被ります」という約束の証券で調達します。これを業界ではエクィティと呼んでいます。さて、このエクィティの投資家、いくらの金利収入があるでしょうか?
まず、プール全体で1500万円の金利収入があり、ここからA号債・B号債に支払う金利、合計170万円が差し引かれ、1330万円になります。一方、このプールでは毎年貸し倒れがおきますので、仮に毎年5%の人が貸し倒れると仮定しますと、500万円が貸し倒れて回収できないわけですから、差し引きそれでも830万円の収入がエクィティの投資家に入ることになります。1000万円の投資に対して毎年830万円の収入が入ってくるわけですから、一見、おいしい投資と言えるでしょう。
しかし、上記の計算には大きな前提があります。この前提が崩れると、大変な損失を被ることになるわけです。
続きは次回・・