僕たちの席は劇場の前から二列目、舞台に向かって右側のいちばん端だった。



「ここからだと、見にくいねパパ」



「何いうてんねん。手品なんか横から見たらタネが分かるゆうやろ。



アレとおんなじでな、こっから見たら芸人のいろんなことが見えてくんねん」



「へぇー。パパ、おもしろいことちっとも言えないくせに、さっきから芸人のウンチクはすごいね」



「うるさいわいっ!



それよりな、幕が上がったら芸人がどんな様子で出てくるか、二つの目ぇをパチッと開いてしっかり見とくんやでぇ」



ブーーー!!!!!



開演を知らせるブザーが鳴り響いた瞬間、驚きと興奮で僕はめっちゃびっくらこいてしまった。



一番手は、金髪のパンクっぽいお兄さんと黒ブチの長四角の眼鏡をかけたインテリっぽいお兄さんのコンビだった。



三分くらいの短いネタをやり終えると次々に他のコンビと入れ替わる。


たまにパパが解説を加える。



「最初のコンビと四番目のコンビ、オチがかぶってたやろ。



あれをな業界用語で『オチ合う(落ち合う)』言うねん。[著者解説:ウソっす。すんまへん☆]



ベテランになってくるとな、用意しといたオチがかぶってしもうても、ポポンとその場でアドリブ効かせるもんやねん。



つまり、コイツラはまだ若手いうこっちゃ」



へぇー。僕はただ笑って見てただけで、そんなことにはちっとも気が付かなかった。



「オチかぶった後輩はかわいそやでー、先輩から後でボッコボコや」


僕は思わず息を飲んだ。
ステージの上は華やかでとってもまぶしいのに、芸人の世界ってすごく厳しいんだな★



嘘っぱちでお笑いバトルに出るなんて言ってしまったことを後悔した。



そしてなんとも言い様のない恐怖が僕に『襲い掛かってきた』。



つづく







目標の連載一ヶ月を突破。
次は、目指せ50語!