ヨーロッパで農耕が開始された時代の化石調査の研究内容が報告されました
(Nature(2015)doi:10.1038/nature16152)。


調査対象は紀元前8500~3000年のユーラシア大陸に生きていたとされる人間の化石230の遺伝子(DNA)。


この遺伝子を調べると、身長、大人になって乳糖を消化する酵素、脂質代謝、ビタミンD代謝、メラニン色素代謝、免疫に関する遺伝子群(あるいはその近傍)でかなりのバリエーションがあったといいます。


紀元前8500年のヨーロッパはちょうど農耕が開始された時期。


現在のトルコから移住してきた人類によって開始されたと推定されています。


この時期からサバイバルに有利な遺伝子のバリエーションをもつ個体が選択されたのではないかという説の裏付け研究です。


北西ヨーロッパは寒冷地域。


この地域に適合するために、メラニン色素が少なく、身長が高く、乳糖を大人になっても分解できてかつ脂質をエネルギーにできる体質が獲得されたと結論したいのでしょう。


遺伝子研究というのは、あくまで建物の設計図を見ただけのものです。


その設計図からどのような建物がたてられるかは、大工さんの腕、道具の種類、そのときに入手できる素材によって大きく異なりますよね。


人間もこれとまったく同じで、遺伝子だけではどのような特質をもつ人間が活動していたのかはほとんど分かりません(ネオダーウィニズムの間違い!)。


まったく同じ遺伝子をもっていても、スイッチのオン/オフでまったく違うタンパク質ができます。


狩猟採集時代から農耕革命を経て現在に至るまでに、遺伝子の設計図が変わったのではなく、遺伝子のスイッチのオン/オフが変化したことの方が大きいでしょう。


ここを解明するのは、遺伝子研究ではなく、横断的なサイエンスの集積が必要となってくるでしょうね(*^_^*)。